聴覚障害者への情報保障に関する工夫
 ―施設利用の観点から―

指導部指導課 春日井中・小松原正道・菅原美杉・渡邉雅浩

1.はじめに

 聴覚障害は、一般に「情報障害」「コミュニケーション障害」であるといわれている。すなわち、聞こえない、あるいは聞こえにくいために、さまざまな情報を獲得することに一定の困難を伴うことを示している。
 本稿では、聴覚障害入所者に対する情報保障の例として、主に施設の環境整備を中心に報告したい。

2.各種情報機器について

 更生訓練所では、聴覚障害入所者の生活する宿舎を中心に、非常時(災害発生時等)の緊急放送や、日常のお知らせや呼び出し等が、視覚的に「見て」、あるいは振動で「感じて」理解が可能となるような情報提供機器を設置している。
 (1) 聴覚障害者用誘導装置
 (2) 振動ベッド
 (3) 双方向映像通信システム(エレベーター内)
 (4) メールの受信機器
 (5) 入所者情報掲示板
 (6) その他…FAX、パトライト、ストロボリンガー、ループアンテナ、「かきポンくん」(簡易筆談器)

3.まとめ

 「聴覚障害」は、外見から一見して障害を理解してもらうということが困難な障害であるため、配慮の必要性がなかなか理解されにくい。その為、バリアフリーやユニバーサルデザインの視点から環境整備が進められている今日でさえ、具体的な配慮を見落とされがちであるという側面がある。
 更生訓練所の環境整備も20年以上の歳月をかけて、徐々に改善されてきている。しかし、万全と言える状況ではない。訓練室、視聴覚教室、学習室、面接室、病院等、聴覚障害入所者が頻繁に利用する場所でさえ、災害発生を視覚的に知らせるシステムが整備されていない現状である。
「理解されにくい障害」であるからこそ、利用者側の視点に立った問題点と真のニーズを捉え、適切なサービスの提供を図れるよう、施設整備を行う必要性がある。
 今後とも、聴覚障害入所者が、安心して生活できる環境作りを目指し、ハード面のみならずソフト面をも含め、さらに整備を進めていきたい。




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