ターゲット発見課題の成績とロービジョン者の視機能との関係

病院 第三機能回復訓練部 中西勉、簗島謙次、菅野和子、三輪まり枝、林弘美、小林美貴恵

1.目的

 ロービジョン者が歩行する上での環境確認能力を屋内で評価するための基礎的データ の収集を研究の目的とした。

2.対象者

 33人(男27人、女6人)のロービジョン者に数えてもらった。平均年齢は44.1歳 (SD±12.4)であった。

3.方法

 ロービジョン者に2mの視距離にあるスクリーン上に投影されたターゲットを数えて もらった。課題は、ほぼ同じ大きさの図形(ひし形、三角形、星形)が分散している中 からターゲット(星形)を数えることであった。ターゲットの大きさは6cmの円が入る 程度のものであった。正答数と回答数の差(誤差)と数えるのに必要な時間(所要時間) を求め、視機能との関係を調べた。なお、回答方法は4分以内に回答する場合(時間制限) と、分かり次第回答する場合(即答)であった。なお、誤差については時間制限と即答 での有意な差がなかったため、時間制限の値を結果に用いた。また、所要時間は即答で のみ測定した。

4.結果

 (1)誤差および所要時間:誤差(時間制限)と視力(logMAR)の関係はr=0.60(p<0.01)、 視野ではr=-0.35(p<0.05)であった。所要時間(即答)については、視力(logMAR)、視野 ともに有意な相関は得られなかった。 (2)回帰分析:時間制限での誤差を目的変数、 視力(logMAR)と視野を予測変数として回帰分析を行った。その結果、偏回帰係数は視力 (logMAR)が2.83、視野が-0.07でともに有意であった。標準偏回帰係数は視力(logMAR)が 0.63、視野が-0.39であった。回帰式全体の説明率はR2=0.51で有意であった。

5.考察

 ロービジョン者がほぼ同じ大きさの図形の中からターゲットを発見する課題では、 数え間違い(誤差)に関しては視野よりも視力が影響しやすいことが分かった。 しかし、発見時間(所要時間)については、視機能の影響は明らかにはならなかった。 よって同じような大きさの物が分散している場合は、目的の物を見分けるには視力が 優先され、見分けるための時間では視力(logMAR)や視野の影響は少ないと言えよう。 電車の経路図から目的の駅を探したり、複数の人がいる場合に目や鼻など顔の特徴から 知り合いの存在に気付くことなどが例としてあげられよう。




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