リハビリテーションにおけるリエゾン精神医学の実践と手掌部発汗検査応用の試み

病院診療部 浦上裕子

 コンサルテーション・リエゾン精神医学とは1920年代に総合病院における心身医学の発展に伴って始まり(Lipowski,1996)、その介入法に5つのモデルが提唱されている。(@患者へのコンサルテーションA危機介入的コンサルテーションB治療者・スタッフへのコンサルテーションC治療状況へのコンサルテーションD拡大精神科コンサルテーション)現在日本の大学・総合病院でも治療の過程で生じる様々な医学的問題に対してこの概念・モデルが応用され、精神科医と他科の医師との間により密接な協力関係を築き、多専門職種のチームとの間の連携が望まれている。当センターが、身体障害者の急性期後からのリハビリテーションを行い、生活訓練、社会復帰・就労を支援する役割を実践している中で「精神医学的介入が要求される」問題に対して、どのようなモデルで介入すべきかを試行錯誤し、現在以下の3つの側面からの試みを行っているので実例を交えて報告する。

1.急性期後の入院リハビリテーションの過程における介入

 @脊髄損傷患者:病前性格の影響、障害受容の過程における抑うつ反応、家族や社会環境などにより、さまざまな精神症状を示し、問題行動を起こし、これがリハビリテーションの進行に大きく左右する。そのような症例に対して、ケース会議と並行して関係職種との間で精神科ミニ・カンファレンスを開催し精神症状を説明しそれにより出現する行動を理解し、対応を検討することでリハビリテーションに介入した(10例)。受傷時に頭部外傷を合併する症例や内因性精神障害をもつ症例への治療的介入を試み、主治医としてもリハビリテーションを経験した。
A切断患者はしばしば「幻肢痛―慢性疼痛」という病態を示す。現在は薬物療法・精神療法を試みているが(8例)、向後このような症例に対して多専門職種によるアプローチ法を作り上げる必要性がある。
B脳損傷:精神医学では器質性精神障害と分類され、薬物治療が必要な病態(うつ、せん妄、攻撃的行動など)には治療的に介入するが、高次脳機能障害に伴う反応性の精神症状や脳損傷後の人格変化などを鑑別し、また発症前に内因性精神障害をもつ症例も多くその影響や治療の必要性などを多専門職種とのカンファレンスの場で助言し、共に検討することでリハビリテーションの成果をあげてきた。

2.聴覚・視覚障害者の診断と治療の現状

 @聴覚障害者:先天性聴覚障害者は、精神発達過程においても障害をきたすが反応性の精神症状(適応障害・心因反応)に対応しているのが現状である。向後系統的なアプローチの確立が望まれる。A視覚障害者:1.DSM-IVの診断基準に基づいて診断する場合、第3軸の「一般身体要因による影響」が先天性視覚障害者と中途失明者とでは異なり、臨床的に同じうつや不安といった精神症状を示しても生理学的要因が異なり治療も異なる。2.視覚障害(盲)を示した転換性障害の1例を報告する。(この症例は本年度眼科と共同で症例発表を行った)。

3.手掌部発汗検査(精神性発汗)の臨床応用

 局所発汗量連続記録装置(Kenz-Perspiro 201)による自律神経機能評価法の臨床応用を示す。




前頁へ戻る 目次へ戻る 次頁を読む