国立視覚障害者更生援護施設卒業生に対する運動・スポーツに関しての調査報告

国立福岡視力障害センター教務課 江黒直樹
国立函館視力障害センター教務課 熊谷日出夫
国立身体障害者リハビリテーションセンター理教部 河野章
国立塩原視力障害センター教務課 橋本定雄
国立神戸視力障害センター教務課 細川健一郎

1.はじめに

 保健体育科目の目標として、入所者が卒業後、QOLのために健康の保持と体力の向上を意識させ実践させることが挙げられる。そのためには、正しい知識、技術を身につける必要がある。
 今回、卒業生の現状を把握するため、卒業後の運動やスポ―ツの実態を調査することにした。5つの国立視覚障害者更生援護施設卒業生500名(各施設100名)にアンケート調査を行った結果回収率71.2%であった。

2.調査結果

(1) この1年間に運動・スポーツを実施した者は61%であり、実施者の半数近くは実施日数が週に1日以上(年間52日以上)である。
(2) 実施種目は、「散歩、歩け歩け運動」、「体操」、「ジョギングランニング」などが多く、年間3種目程度が行われており、その実施理由は「健康・体力づくりのため」、「運動不足を感じるから」、「友人・仲間との交流として」、「楽しみ・気晴らしとして」が多い。
(3) 運動・スポーツ実施者の85%は、各施設入所中の体育の授業が運動・スポーツの実践に何らかの形で役立っていると感じている。視力の低い群で「役立っている」と回答した者が多く、60歳以上の群で「役立っていない」と回答した者が多い。
(4) この1年間に運動やスポーツを実施しなかった者は39%であり、その理由は「時間がないから」、「仲間がいないから」、「機会がなかったから」「場所や施設がないから」が多い。
(5) 今後、運動やスポーツを実施したい者は84%であり、この1年間に運動やスポーツを行わなかった者でも、その約70%は今後の運動やスポーツの実施を希望している。
(6) 運動やスポーツを実施する上で改善したい点は、「障害者が優先的に使用できる公共スポーツ施設を増設する」、「スポーツに関する情報を提供する」、「交通機関や道路の整備、改善をする」、「一般の公共スポーツ施設を使いやすいように整備、改善する」、「スポーツ活動のためのボランティア組織を整備する」が多い。

3.今後の課題

(1) 年齢が高くなっても生涯スポーツ実践に有効な内容を体育授業の中に組み込んでいくことが必要である。
(2) 知識・技術以外に自己実現力を持った入所者の育成が必要である。
(3) 指導者や障害者スポーツ組織の整備、一般スポーツ施設のバリアフリー化、情報提供方法の確立など、地域における社会資源の整備が生涯スポーツ実施には重要であり、改善の働きかけや一時的な機能の代替が必要である。




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