第35回業績発表会 各賞受賞者コメント
業績発表会実行委員会事務局

 平成30年12月21日(金)に開催された第35回業績発表会で表彰された職員の受賞コメントをご紹介します。

○優秀賞
  自立支援局第二自立訓練部          田中 匡
  病院リハビリテーション部          伊藤 伸
  秩父学園地域療育支援室           川俣 ひとみ
  病院リハビリテーション部          山本 正浩
  研究所感覚機能系障害研究部         鷹合 秀輝
  研究所感覚機能系障害研究部         酒井 奈緒美

○奨励賞
  自立支援局第一自立訓練部          中郡 史暁
  自立支援局第一自立訓練部          荒木 俊晴

○特別賞
  神戸視力障害センター支援課         丸山 華子


【受賞者コメント】

<優秀賞>

・自立支援局第二自立訓練部 田中 匡
 演題:「高位頸髄損傷者の生活支援に『スマートスピーカー』を活用した事例について」

 この度は私どもの発表に対して優秀賞という身にあまるご評価をいただき、大変光栄に存じます。ご協力いただきました当事者のみなさまに、この場をお借りして御礼申し上げます。
 近年、AIが搭載されたロボットの活用やICT技術は飛躍的に発展しており、リハビリテーション分野においても注目されています。すでに介護ロボットやAIを活用してケアプランの立案を行う機器の導入を開始している地域もあります。今回の取り組みでは、重度四肢麻痺を呈する高位頸髄損傷者がスマートスピーカーと赤外線リモコンなどの周辺機器を活用し、テレビ、照明、ブラインドを音声で操作することによって介助量軽減を図ることができました。上肢や手指の操作性を補うことはもちろん、座位や臥位といった姿勢に影響されずに機器を活用できることも有効なツールであると感じています。リハビリテーション従事者が医療および福祉機器を把握するだけでなく、近代技術を活用した一般製品に着目し情報を収集することは重要であることを確認しました。これからも重度障害者を受け入れる施設として、対象者の生活が充実したものになるように、幅広い視野をもって質の高いサービスの提供に取り組んでいきたいと思います。

・病院リハビリテーション部 伊藤 伸
 演題:「人工呼吸器装着の高位頸髄損傷者へのコミュニケーション機器導入事例」

 当センターに着任して二十数年になりますが、業績発表会での受賞は今回が初めてであり、なんとなく少しだけ恥ずかし気持ちもありますが、自分たちが行ってきた臨床を高く評価していただいたことに対して、一人の臨床家として率直に嬉しく思いますし、今後の臨床の励みになります。今回の発表はコミュニケーション機器の導入に関する内容ですが、その背景には病棟での手厚く暖かく的確なケアがあり、PT、STによる効果的なリハ対応があったからこそ実現できたものです。あらためてチームアプローチの重要性を強く再確認できました。
 今回の受賞に当たりましては、事例報告の作成にご協力いただきました患者様およびご家族の皆様には心から感謝申し上げます。また、主治医をはじめとした関係スタッフの皆様にも心から御礼申し上げます。本当にありがとうございました。今回の事例で得られた知見を、できるだけ多くのリハ専門職にお伝えできるように、今後も何らかの形で発信し、さらなるリハビリテーション技術の研鑽にも努めて参ります。

・秩父学園地域療育支援室 川俣 ひとみ
 演題:「地域子育て支援拠点型事業「なないろ」をきっかけに地域の発達支援の輪が広がった経過についての報告」

 この度は私どもの発表につきまして身にあまる評価を頂き、心より感謝申し上げます。また、本事業へのご理解とご賛同をいただき、ご協力いただいた所沢市児童館職員の皆様、行政の関係部署の皆様には深く感謝すると共に「なないろ」同様のサービスを自主事業として立ち上げ、継続的な支援を実施していただいていることに合わせて感謝申し上げます。
 本事業は発達障害とその支援に関わる調査・研究・発信および地域への社会貢献という観点を持ち実施させていただいた当園の試行的事業ではありましたが、事業を展開して行く中、明らかになっていく地域の現状や利用者の声を迅速且つ柔軟に反映させた事業が展開できてきたことで、利用者実績を伸ばし、関係機関との信頼関係の構築にも繋がって行きました。
 そして、この実績や関係機関とのつながりを足がかりとして実施した「出張なないろ」は地域に向けた当園の意図的配慮を踏まえた絶好の活動の場が設定でき、このフィールドを地域の支援者と共有できたことで地域の支援者自らが地域の状況を確認し、この事業の必要と重要性を感じ、地域主体の事業を展開して行くという方向に広がって行きました。
 今後は、地域に繋がったこの支援が確固とした継続的支援へと転換していくことを強く願っています。ただ、そこには、まだまだ開花していない地域の力や継続を維持していく力の危うさに支援を送り続ける体制の早期構築の必要を感じます。現在も「出張なないろ」のフォローということで独自に事業を開始した2つの児童館の職員に向けては支援者支援という形のお手伝いをさせていただいていますが、「出張なないろ」のような事業を地域全体で取り組んでいくべき事業との認識をひとつに、地域におけるキーパーソンと役割を明確にしながら、実りある事業へと発展させていっていただけることを願い、今後も地域に向けた発信を続けていきたいと思っています。

・病院リハビリテーション部 山本 正浩
 演題:「高次脳機能障害の自己認識と気分状態との関連」

 この度は私どもの発表につきまして「優秀賞」という評価をいただき、大変感謝申し上げます。
 今回の調査から、高次脳機能障害者の多くは自己の障害の存在について否定しているわけではなく、障害の程度を正しく認識することや復職や復学など社会復帰をした際に想定される問題を予測することが困難なことから漠然とした不安を持っているであろうことが示唆されました。
 障害の自己認識改善のための一つの手段としてグループ訓練が推奨されています。当院では似たような症状を持つ高次脳機能障害者を対象にOTとST合同スタッフからなるグループ訓練を実施しています。ここでは作業課題を通して障害について体験的に気づいたこと、さらに日常生活で想定される問題にどう対処すればよいかなどを患者間で話し合い、問題解決につながるように支援しています。そうすることで不安が軽減すると思われます。
 高次脳機能障害を持つ人々の社会参加を支援する施設としての役割を再認識し、より質の高いサービス提供に向けた努力を継続する所存ですので、今後とも皆様からご指導いただけますようよろしくお願いいたします。

・研究所感覚機能系障害研究部 鷹合 秀輝
 演題:「感覚器シナプスにおける機能解析」

 この度は、業績発表会優秀賞を頂きまして、誠にありがとうございました。この場をお借りして、これまで私の研究をサポートして頂いた本研究部・森浩一前部長(現自立支援局長)、世古裕子部長、並びに共同研究者の皆様方に深謝申し上げます。
 神経細胞同士の繋ぎ目はシナプスと呼ばれますが、ふだん余り耳にすることがない言葉だと思います。内耳にある有毛細胞において音波という機械的な振動が電気信号に変換され、シナプスを介して蝸牛神経へとシグナルが伝えられていきます。最近になって、加齢や騒音によって有毛細胞シナプスの障害が生じて難聴を呈してくることが明らかになってきており、シナプス研究の重要性が以前よりも増してきています。
 21世紀は感覚器の世紀とも言われます。内耳性難聴に対する創薬やリハビリテーション開発に向けて病態解明が必須です。聴覚に障害を持つ方々のQOLの向上に貢献するべく、今後も基礎医学的な研究手法を用いて難聴の病態解明研究を推進していく所存です。

・研究所感覚機能系障害研究部 酒井 奈緒美
 演題:「大規模調査による幼児吃音の発症率と回復率」

 この度は我々の研究を優秀賞としてご評価いただきましたこと、大変光栄に存じます。本研究は、日本医療研究開発機構(AMED)から補助金を得て行われた研究です。国リハ及び各地域の分担研究者の先生方、調査実施の補助を担ってくださった研究協力者、そして調査へ回答してくださった約1700名のお子様の保護者様に、この場を借りて感謝申し上げます。
 今回の調査では、幼児期(3〜4歳)に吃音の症状を示す子が10%前後存在すること、そして3歳の時に症状を示していた子の55%が1年後には症状が消失していたことが示されました。このような疫学データは、吃音のある子の支援システムを考えていく際に重要な情報となります。特に日本においては、吃音に関する疫学データが非常に少ないため、本研究は重要な知見の一つであろうと考えております。調査は対象の子が5歳を過ぎるまで継続します。これらの結果から、4歳以降の吃音の発症率・回復率、また吃音に関わる要因などを明らかにし、日本における吃音のある子の支援システムを提案していきたいと考えております。


<奨励賞>

・自立支援局第一自立訓練部 中郡 史暁
 演題:「視覚障害者に対する標準的なサービス体系化の取組〜ICT訓練指標の作成〜」

 この度は標記演題に奨励賞というご評価を頂き誠にありがとうございました。 視覚機能訓練の標準化に係る取組みは平成25年度からはじまり、今年度は私が担当させて頂きました。今回の発表ではICT訓練指標のご報告をさせて頂きましたが、歩行・日常生活・ロービジョン・点字・録音再生機訓練についても、現在指標作成を進めております。
 訓練指標作成に取りかかるにあたって、今までに集積したデータをどのように活用すれば良いのかと大変悩みましたが、私が視覚機能訓練課に配属された当時を思い出し、どのようなツールがあれば経験の浅い職員が訓練計画を立てる際に役立つかを考えながら取り組んでまいりました。
 視覚障害の方に限った話ではありませんが、アセスメントの難しさは「本人が困っていることに気がついていない」、「方法があることを本人が知らなかった」といった場合に、本人が本当にやりたいことに気づかせてあげなければならない点にあると思います。そして、利用者に気づきを与えるためには訓練計画を立てる我々ケースワーカーが気づかなければなりません。今回作成した指標を「このくらいの見え方の方にはこの訓練が必要」と気づくためのツールとして、役立てていければと思います。
 最後に、関係各位の皆さま、ならびにデータ分析にご指導・ご協力くださった先生方に改めて深く感謝申し上げます。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

・自立支援局第一自立訓練部 荒木 俊晴
 演題:「発達障害支援室における職場定着支援の取り組み」

 この度は、発表内容について奨励賞を頂き、誠にありがとうございます。また、発表につきましてご指導いただいた皆様に深く感謝申し上げます。
 発達障害支援室では、利用開始前の相談から就職後の定着支援まで一貫した体制で、就労移行支援サービスを提供しています。支援を経て自分に合った会社に就職し、活躍されている方でも、人事異動による人的環境の変化や業務内容、家庭環境の変化など様々なことが起こります。そうした戸惑いや不安を抱えつつも、長く安定して働くために定着支援は重要となります。日々ニーズの把握に努め、試行錯誤してより良い支援を目指しておりますが、ご家族や就職先の事業所、地域の支援機関などのお力添えのおかげと感謝しております。そして何より、ご本人が生き生きとやりがいを持って働くことはもちろん、その姿に影響を受けて周囲の方たちに良い効果が生じていくことが私たちの喜びとなっています。今回頂いた評価を励みに、今後ともより良い支援を目指して参ります。


<特別賞>

・神戸視力障害センター支援課 丸山 華子
 演題:「神戸アイセンターとの連携による事業展開について(現況報告)」

 この度、神戸視力障害センターが全所的に取り組んでいる事業報告に対し、特別賞を頂戴することができました。関係者の皆様に改めてお礼を申し上げます。
 神戸アイセンターでの利用者募集活動は、新しい出会いや挑戦に満ちています。その中で、私たちは失敗を恐れずに自らを変える勇気を持つこと、言い換えれば、変わるチャンスを多く手にし、次世代の視覚障害リハビリテーションが創造される最前線に立っていることを日々実感しています。これからも、ロービジョンケアを必要としている方々と国立施設が持つノウハウを共有し、自らの役割を果たしていきたいと思います。
 一方、社会資源に手が届かず困っている当事者の方々へ具体的に対応するという役割についても、同時に果たさねばなりません。前述の利用者募集活動でも知名度の向上に取組んでいますが、まだまだ当センターは認知度が低い状態です。引き続き、地道な広報活動も行ってまいります。
 最後に、多様性を認める時代に、若い世代の職員とこのような仕事に取組むことができ、幸運に思います。これからも新しい価値観や新しい現実を創出するのは、自分自身であると意識し、現実を冷静に受け止め、勇気をもって業務に挑戦してまいります。




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