脳卒中リハビリテーション看護認定看護師教育課程
プレゼンテーション発表会が行われました。
                学院

当教育課程では「意思ある学び」を教育手法としたプレジェクト学習を取り入れています。医療人としては、他者評価も重要ですが、自ら動機を高め、自己評価をして学び続けることがとても重要で、我々としては、そういう人を育みたいと考えています。
 他者評価においては、マイナス面を指摘することに目が行きがちですが、この教育手法はプロセスからプラスを見いだす所に特徴があります。またグループダイナミクスを活用した教育効果をねらいとしています。
 このような考えのもと、昨年度より、教育課程の開講から講義・演習・実習・学内演習を通して、研修修了の最後にプレゼンテーション発表会を行うこととしました。
 この発表会は、学内演習という教科目の中の学習単元の1つに位置づけています。その単元のねらいは、「チームカンファレンスやケーススタディを通し、脳卒中リハビリテーション看護における自己の課題分析を行い、今後の活動の場において脳卒中リハビリテーション看護に関わる自身の活動のあり方を表明できる」ことです。
 研修というものは、ともすれば受け身な姿勢になりがちですが、当教育課程においては、主体的に学ぶことを重視しています。
 研修開始時には研修生は自己のビジョンを検討します。どんな動機で何のために研修を受けるのか。自分の性格傾向はどのようなものか。強みや弱みを見つめて自分自身と向き合います。
 研修修了時には研修期間の自分の学習経過を振り返り、自己分析を行い、今後の活動について考察します。
 当教育課程を修了した研修生は、“全人的医療の実践者として高度な知識と技術を身につけ、これ以降も看護の向上のために努力を重ねていくという姿勢を養い身につけた人たち”だということができます。筆者の尊敬する医の倫理で有名な中川米造先生(1926−1997)の言葉を借りて言うならば、“全人的医療”とは、患者さんの魂の部分をみられる医療です。
 研修生の発表からはそんな医療人としての決意を垣間見ることができました。
 「自分で今まで気づいていなかった欠点や否定的な面を知り、それに直面してその中に肯定的なものを見いだし、生きてゆこうとする過程は予想外に苦しい。影の自我への統合は実際にするとなると容易ではない。」そんな体験をして成長した研修生は、逆境の中で見失いがちな“自己”を必死に掴もうとされている患者さんと向き合い、一緒に模索して、よりよい道を見つけ出し、患者さんのアイデンティティの確立と全人的復権を支援することができる、そんな医療人となっていくのだと確信しました。
 これは脳卒中リハビリテーション看護そのものです。 教育課程の研修は、単にテクニックを得るためだけの機会ではなく、職業人としてより深い洞察力を身につけ、自分の知識技術を見つめ直す重要な機会です。
 研修期間中にはつらいことや苦しいこともあったでしょうが、そうした経験を通して、看護専門職業人として大成していく様を、この発表会で確認できました。
 また、この発表会には、実習施設の指導者、当教育課程の過去の修了生(臨床現場出活躍中の認定看護師)、研修生の所属部署の管理者等も参加します。質疑応答では、研修生の学びや成長のための叱咤激励、看護職同志の情報交換などで盛り上がりました。
 この発表会の場は、研修生の学習の場ということに留まらず、会場に集まったすべての方の学習の機会ともなっています。
 修了生の立場からは、修了当時の自分を回想し、初心に戻り、認定看護師としての活動に当たり大切な確認ができます。
 実習指導者の立場からは、実習開始時点からの研修生の成長を確認し、自分の指導の結果も振り返ることができます。研修生の所属施設の管理者の立場からは、研修生を送り出す時点から修了時点までの変化を確認し、職場に戻ってから、人材をどのように現場に活かすかについて検討する機会になります。
 まさにグループダイナミクスが活かされる場です。
 グループダイナミクスは1930年代後半、アメリカにおいて心理学者のKurt Lewin(1890―1947)によって創始されました。同じ場を共有する者の集団の力動性、成員間の相互依存性への強い関心が高まり、この相互作用が生じることによって、それぞれ抱える問題を解決しようとします。
 この学習方法を実施して2回目となりますが、この発表会を企画する教官にとっても、研修期間の教育活動の成果や研修生達の成長を目の当たりにし、研修生の未来への期待と自らの教育活動の意義を実感できました。同時に、至らない点、気づかされた点も多く、次回に向けて改善すべき課題を得ることができました。
画像:プレゼンテーション発表会の様子



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