病院での補助犬同伴受け入れについて 検証と職員研修会
                病院 患者の権利・臨床倫理委員会

今年度より障害者差別解消法の施行を受け、障害者が日常生活を営む上での社会的障壁の除去について事業者は必要かつ合理的配慮が義務づけられました。一方で補助犬(盲導犬、聴導犬、介助犬)については、2003年に制定された身体障害者補助犬法により、全ての施設で同伴を拒んではならないとされています。医療機関においても、補助犬同伴の受け入れについて円滑に進むように、合理的配慮を求められています。このような状況を踏まえ、今回平成29年3月7日に日本介助犬協会理事の蝸F子先生にお越しいただき、当院での受け入れ体制の調査および職員研修会を実施いたしました。当日は日本介助犬協会訓練部の伊藤美咲主任、PR犬のヌーンも参加されました。

「当院の受け入れ体制の調査」
 車椅子乗車されている補助犬(介助犬)ユーザーの目線で検証をするため、伊藤介助犬トレーナーが普通型車椅子に乗って院内を回られました。当院は補助犬同伴可能であり、検証部門は外来では整形外科,耳鼻咽喉科,内科,診療放射線,臨床検査、訓練ではPT、OT、RS(体育館)、病棟は3階西です。どの部門もスペースには余裕があり、スムーズな移動が確認できました。各部門で担当の方は質問に答えるだけではなく、それぞれの専門分野の立場から質問し、サービスの充実を図ろうとしていました。検証部門の補助犬の待機場所を表1に示します。 排泄は補助犬では定時、または指示により行うように訓練されており、今回は車椅子トイレでペットシーツを敷いて行いました。

表1.検証部門と補助犬の待機場所
部 門 補助犬の待機場所
外来 整形外科 ユーザーの横
耳鼻咽喉科
内科
臨床検査 心電図はベッドの横、車椅子乗車で測定は車椅子の横
診療放射線 MRIは動作音がストレスとなるため、同伴しない。
CTは放射線の影響受けない場所、またはアクリル板防護壁の後ろ
訓練 OT 訓練テーブルの下
PT 訓練台、平行棒、車椅子の横で、他の患者様が移動に支障のない場所
RS トレーニング機器の動作音がストレスとなるため、受付のソファーの横
病棟 3階西 面会者が補助犬ユーザーの場合、デイルームを使用する。患者様が病室から移動できない場合は、病棟と同室者の了解が頂けたら病室で面会をする。どちらも待機場所はユーザーの横

「職員研修会」
 前半は補助犬の役割ついての一般的な説明、補助犬と暮らすユーザー側の管理・責務についてでした。ユーザーと補助犬の関係は、ユーザーの苦手な動作を補助するだけではなく、「人の手を借りることなくできる」という前進的な気持ちになれることが大きい。ユーザーの生活を劇的に変えられるパートナーであるとのことでした。「補助犬はユーザーを障害者として捉えていない」という言葉があったが、まさにその通りであると感じました。このようになくてはならない存在であるが、同伴を断られるケースが多いだけではなく、その存在自体知られていない実状があるとのこと。ユーザーは補助犬の認定証と健康管理記録携帯が義務付けられており、犬の管理は徹底されている。それでも受け入れる側の知識不足のために、「感染の恐怖」という理由で同伴拒否が目立ち、医療機関でも未だに理解が乏しいという説明でした。
 中盤には、伊藤トレーナーとPR犬ヌーンのデモンストレーションがありました。
 後半は、院内検証の結果についてご指摘いただきました。当院ではそれぞれの場所に、ある程度スペースがあるので、補助犬の居場所に困ることは無さそうであるが、MRI室など工夫が必要な場所もあり今後の検討課題です。また、ユーザーが外来患者か入院患者かあるいはお見舞いなどの来訪者かで対応も異なります。補助犬同伴を受け入れるために、職員の対応体制を整え、またユーザーの施設利用についての案内や他患者への説明の方法など、今後整備すべき点があると教えられた研修会でした。

「参考資料」
1 身体障害者補助権ユーザーの受け入れを円滑にするために医療機関に考慮していただきたいこと
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/syakai/hojyoken/html/a08.html

2 身体障害者補助犬同伴受け入れマニュアル
http://www.jsdrc.jp/jsdrc_doc_manual/manual_iryo/

3 まずは受け入れてみませんか?補助犬使用者の受け入れ方 DVD



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