国際セミナー「障害者の移動支援を考える−人的支援等のソフト面を中心に−」


企画・情報部

 平成28年2月13日(土)に東京国際フォーラムにおいて障害者の移動支援を考える国際セミナーを開催いたしました。当日は7題の発表と講演者によるディスカッションを行い、約100名の方々が参加しました。
 本セミナーでは移動支援の人的支援に焦点をあて、アジアからマレーシア、タイの障害当事者として支援活動に従事している講演者、日本からも障害当事者として移動に関わる活動している方、観光の面から支援を行うNPO、当センターからは移動に関する訓練を行っている職員から、移動について具体的な活動の紹介や国の状況等について発表していただきましたので、各発表の要旨を以下にご紹介します。

①地域の中で生活するために(サオワラックトーンカイ DPIアジア太平洋地域事務地域開発担当官)

 障害がある人々が地域の中で包括されることは、個人の尊厳、選択の自由があるということで、障害者権利条約に記載されており、国はその実現のため支援サービスを利用しやすいものにする必要がある。また地域の中で障害がある人への人的な支援はその地域の身近にいる人々が協力し、それを行政が支えることが必要である。

②公共の場における障害がある人々への支援〜マレーシアのジレンマ〜
(ピータータン 障害平等フォーラム 国際コーディネーター)

 マレーシアにおける障害がある人々の移動に関する運動は都市交通機関としての電車、バス、航空機に対して障害がある人々が抗議活動を行うことで、対応されていった。マレーシアには障害者法をはじめとする法律や方針はあるが、施行が十分に行われていないジレンマがある。一方、障害がある人自身が交通機関事業者に支援の方法について研修する取組みを行っている。

③公共交通における車いす乗客への『おもてなし』の課題と展望
(今福義明 Access-Japan代表)

 日本においては2000年に交通バリアフリー法が制定されて以来、交通機関のバリアフリー化が進んだ事と障害当事者としてのこれまでの経験について紹介した。特に路線バス、鉄道駅はアクセシブルである一方で、宿泊施設のバリアフリーの部屋数や駅で電車に乗る際に渡り板での介助が必要な点等は今後の課題である。

④視覚障害者の外出支援の現状と課題「フォーマル、インフォーマルな支援の組み合わせ」(鈴木孝幸 社会福祉法人 日本盲人会連合副会長)

 移動において“ものを見る”ことは、目的地まで移動する際の情報の獲得をするという重要な役割である。視覚障害者の移動に関わる人的な支援には行政が実施するフォーマルな同行支援と、ボランティア、病院や店舗におけるインフォーマルな支援があり、その組み合わせを効果的にすることが大切である。

⑤バリアフリー観光で育つ心のバリアフリー〜諦めない気持ちは人の心を変化させる〜
(野口あゆみ NPO法人 伊勢志摩バリアフリーツアーセンター事務局長)

 NPOとして伊勢志摩を訪れる障害がある人々や高齢者のためにバリアフリーの調査、個人に合わせた情報提供を行っている活動を紹介。特に観光地においては施設や環境をバリアフリー化して本来の姿を変えてしまわず、人的支援を活用することで来訪者に楽しんでもらいたい。

⑥頸髄損傷者に対する移動支援について(清水 健 当センター自立支援局 主任理学療法士)

 移動において頸髄損傷者自身が知識と技術を身に着ける必要があり、訓練プログラムとして提供している。公共交通機関の利用時に、頸髄損傷の事をよく理解しておらず、介助をして危険を招く事もあるといった事例をあげ、訓練や福祉の専門家は、一般社会において理解を深めるための働きかけが必要である。

⑦視覚障害者に対する移動支援について(谷 映志 当センター自立支援局 主任機能訓練専門職)

 視覚障害がある人々の歩行訓練の内容について、屋内歩行から屋外歩行に進めていくこと、他者への援助依頼をどのように行うかの練習も行っている事を紹介。訓練以外にも交通事業者での研修指導等の活動も行っている。

 セミナーの後半では、発表を踏まえて、現在取り組んでいる事を講演者に伺い、また会場の参加者から出された質問の一部を講演者に答えていただく等の時間をとりました。
今回のセミナーでは多くの障害当事者の方々が参加して下さいました。ご不便をおかけした事もあり、今後、より参加しやすい環境に留意したいと考えております。
 セミナーの開催にご協力、ご参加いただいた皆様に感謝申し上げます。

画像:ディスカッション
ディスカッション
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