「夏バテ」対策のススメ!

健康増進センター 運動療法士 山下文弥

 夏バテって、なんだろう! 
 夏バテとは、夏の暑さに身体が順応出来ずに現れる様々な症状を総称して、夏バテと呼んでいます。
 私たちは、体温が上昇すると、発汗等で体温を下げようとします。夏は、多量の汗をかきやすく、水分に加えてナトリウムやミネラルなど、身体の調子を整える栄養素も排出され、体内のバランスが崩れてしまいます。その結果、体力を消耗し、夏バテを引き起します。
 障害をお持ちの方は、症状によって、体温調節機能が十分働かず、急激な体温上昇を招くこともあります。また、運動不足の方も、急激な温度変化や真夏日の継続は、容易に夏バテを引き起こします。このように、夏の暑さが続くと、体調を崩す原因になります。
 そんな夏バテの解消には、規則正しい生活に、軽い運動を加えることが良い方法です。

 夏バテになりやすい大好き生活! 
 皆さんは、次のような大好き生活をしていませんか?
① クーラー大好き
 「大きな温度差は大敵」です!
 涼しい環境から暑い環境へ移動すると、身体はその気温に順応しようと頑張ります。
 しかし、温度差が大きいと、身体への負担が大きくなります。
② 冷たい飲み物大好き
 「胃腸の冷えは大敵」です!
 胃腸が働きやすい温度は、36℃程度です。しかし、冷たい飲料水をたくさん飲むと、胃腸の負担が大きくなり、その機能が低下します。
③ ごろごろ大好き
 「不活動は大敵」です!
 ごろごろと、運動不足の生活を続けると、筋肉や身体の各器官の機能が低下します。そのため、夏の暑さに対抗する防衛体力が低下します。
④ 夜更かし大好き
 「睡眠不足は大敵」です!
 私たちは、寝ている間に疲労を回復します。しかし、睡眠不足では、回復時間が少なくなるため、身体のバランスを崩します。

 夏バテ予防の対策! 
 夏バテ予防には、運動、睡眠、栄養のバランスが大切です。暑い夏を乗りきるために、日常生活で出来る、対策をしてみましょう。
① 生活リズムの対策
 私たちは、体内時計と言う機能を持っています。その体内時計は、朝日を浴びると調整されます。さらに、朝ごはんをしっかり食べると、身体が動く準備をしてくれます。
② しっかり睡眠の対策
 疲労は、睡眠中に回復されます。特に、22時〜2時の間は、成長ホルモンなどの分泌が活発になります。その時間帯は、睡眠時間を十分に確保しましょう。もしも、確保できない場合は、20分の昼寝で補うと効果的です。
③ 冷房設定の対策
 体温調節は、交感神経・副交感神経のバランスによって保たれています。しかし、温度差が大きい環境では、この神経のバランスが壊れてしまいます。冷房の設定は、外気温との差が、5℃以下を目安としましょう。
 (*注意)障害や身体状態に合わせて、大きな温度変化を受けないように設定しましょう。
④ 水分補給の対策
 水分補給は、のどが渇いたと感じた時には遅いのです。体重の3%に相当する水分が失われると、脱水により身体の機能が低下してしまいます。脱水症状を予防する目安として、朝・晩の体重の差が2%をこえないように、こまめに水分補給をしましょう。
⑤ 適度な運動の対策
 夏バテしない身体を作るには、軽い運動が効果的です。

 夏バテには、有酸素運動でスタミナアップ! 
 夏バテしない身体づくりは、有酸素運動でスタミナアップがお勧めです。
 有酸素運動とは、体内で酸素を効率よく使う軽い運動で、ジョギングやウォーキングが代表的です。軽い運動なので、誰でも安全に行なうことが出来ますが、それにはポイントがあります。

 有酸素運動のポイント! 
1.運動の強さ:目安は、心拍数と疲労!
・「ニコニコペース運動(*1)」
 ニコニコペース運動は、人と話が出来て、軽く汗ばむ程度で、最大能力の50%程度に相当する運動の強さの目安です。この運動は、年齢や体力、障害の種類や程度によって、一人ひとり異なります。ここでは、年齢を中心に、運動の強さを計算する方法を記載します。
 138―(年齢×1/2)=年齢相応の心拍数 
 *ただし、高血圧・糖尿病・心臓病や服薬をしている人は、まず、医師や専門家に相談してください。
・主観的尺度(疲労の感覚)
 主観的尺度とは、運動中に感じる身体全体の疲労を、数値と言葉で表したもので、その数値を10倍すると、その時の心拍数に相当します。
 ニコニコペース運動=「楽である:10-11」〜「ややきつい:12-13」
2.運動時間は「足し算」!
 30分の運動を、分割しても(10分×3回)、連続しても(30分×1回)、効果は同じといわれています。運動は足し算して、1日の総運動時間と考えましょう。
3.運動の頻度は「無理なく継続」!
 休養を取り入れながら、無理なく続けるのがポイントです。
4.運動の種類は「ちょっとした工夫」!
 日常生活にちょっとした工夫をすることで、有酸素運動を実施することが出来ます。
 例えば、通勤中では、階段の利用、乗り物から徒歩での移動、いつもよりちょっと早歩きなどです。また、フィットネスゲームの活用や、ラジオ体操なども有効です。休日には、積極的に運動やスポーツを楽しみましょう。
5. 運動を行うときは、熱中症に注意!
① 運動中の水分補給は、0.1〜0.2%程度の食塩水やスポーツドリンクがお勧めです。
② 摂取するタイミングは、100ml/15分毎を目安に、こまめに取りましょう 。(*2)
③ 運動を行なう場合は気温28度、湿度60%以下を目安に行ないましょう。(*2)
④ 服装は、通気性の良い素材で、可能な限り軽装にしましょう。
   屋外では帽子を被り直射日光を避けましょう。(写真)
⑤ 疲労、発熱、下痢など、体調が悪い場合、運動は中止しましょう。

 夏バテ予防の原則を参考に有酸素運動を習慣化させ、暑い夏を乗り切りましょう!

(*1)進藤宗洋・田中宏暁・田中守「健康づくりトレーニングハンドブック」朝倉書店.2010.188
(*2)川原貴、森本武利、白木敬三、朝山正己、中山誠一、伊藤静「スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック」財団法人日本体育協会.2006

(写真)屋外でのスポーツの基本!
(写真)屋外でのスポーツの基本!
軽装・タオル・水分・帽子
 
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