「第7回アジア太平洋ろう者競技大会」の支援報告

病院看護部 4階病棟 宮坂良子

 「第7回アジア太平洋ろう者競技大会」は、アジア太平洋地域諸国の聴覚障害者のスポーツの普及・発展を目的として開催される国際ろう者スポーツ委員会の公認競技大会です。 平成24年5月26日(土)〜6月2日(土)に韓国で開催された本大会に出場する日本選手団及び 役員の健康管理、疾病、怪我などに対する応急処置などの業務を医師と共に行うため日本選手 団の帯同看護師として同行したので報告致します。
 
 本大会の開催状況から報告致します。
 参加国は25か国で、参加人数は1,247名でした。日本選手団は194名(選手123名、競技役員 スタッフ57名、本部スタッフ14名)と参加国の中では、1番大きな選手団となりました。 競技は14項目あり、日本はバトミントン、野球、バスケットボール、ボーリング、自転車、サッカー、 フットサル、柔道、水泳、卓球、テニス、バレーボールの12競技に参加しました。
 日本選手団は、5月23日から競技団体ごとにそれぞれの大会スケジュールに合わせて現地入 りし、競技団体ごとに違うホテルでの滞在となりました。また、各競技も8か所の施設(Olympic  Park、Olympic Stadium、高校など)に分かれて行われました。
 
(写真1)開会式の様子(韓国手話と国際手話を交えて)
開会式の様子(韓国手話と国際手話を交えて)
 
 本部スタッフは、本部役員7名、医師(内科、外科)2名、アスレチックトレーナー1名、看護師1名、手話通訳2名、現地語通訳1名の14名で構成されています。メディカルチームは、医師2名(外科1名、内科1名)、看護師1名、手話通訳2名です。
 競技大会前に現地入りする選手団に合わせ、5月23日(水)〜現地入りし、滞在ホテルの1室をメディカルルームとして準備を開始しました。また、個々に動かざるを得ない状況も考え、メディカルスタッフは携帯電話を持ち、随時連絡を取れる体制を取りました。
 診察は、基本的にはメディカルルームとしました。12競技団体が違う場所に滞在しているため、毎日の健康チェックは競技団体ごとにメールで連絡をしてもらい、診察希望者は電話連絡を入れて出向いてもらう体制を取りました。メールでの相談も何件かあり医師が対応しました。
 競技大会開始後は複数の競技会場が散在し、会場は本部滞在ホテルから近郊は地下鉄及びバス利用で所要時間30分、遠方は1時間を要する場所で行なわれていました。
 そこで、メディカルチームは本部滞在ホテル近郊の大会場所と遠方の大会場所とに分かれて現地に赴き、選手の健康や怪我の状態観察を行い、本部事務局と携帯電話で連絡を取り合って移動を行ないました。大会会場を巡回し経過観察の必要な選手は、試合終了後本部滞在ホテルに夜8時頃に来てもらい診察しました。
 
(写真2)練習会場での診察風景
練習会場での診察風景
 
 診察の状況は以下の通りでした。
 <ホテルのメディカルルームで診察> ( )はスタッフ
月日
5/24
5/25
5/26
5/27
5/28
5/29
5/30
5/31
6/1
6/2
内科
1*
1
1(1)
(1)
(1)
(2)
外科
2
4
1
1
 *往診の必要な選手1名は、滞在ホテルまで出向いて診察をした。
 <練習及び大会会場で診察>
月日
5/24
5/25
5/26
5/27
5/28
5/29
5/30
5/31
6/1
6/2
内科
2
1
外科
2
20
3
2
 
 診察のべ人数
   本部診察室(メディカルルーム)・・・・15名
   往診・・・・・・・・・・・・・・・・ 1名
   練習、試合会場・・・・・・・・・・・30名
 診察内容
   内科:発熱、嘔吐、下痢、脱水、片頭痛、口内炎、咽頭痛、頭痛など
   外科:捻挫、口腔内切創、爪剥離、腰痛、肘痛、膝痛、筋肉疲労など
 主な処置
   内科:薬処方、点滴、指導(咳嗽・水分補給・食事・加湿など)
   外科:薬処方、注射、テーピング、指導(ストレッチなど)
 
 選手及びスタッフの健康状態
 後半は疲労から体調を崩すスタッフもいましたが、選手は環境の変化に伴う症状の出現や試合中の接触プレーによる怪我のみで大きな怪我や病気をすることなく終了しました。選手自身が試合に合わせて体調を整えられ、試合で自己の出せる力を十分に発揮でき、良い記録を残すことができていたと思います。(日本選手団:メダル70個獲得)
 
(写真3)サッカー:念願の初優勝
サッカー:念願の初優勝
 
 「第7回アジア太平洋ろう者競技大会」に帯同し、選手やスタッフの方々が本大会に向けて取り 組んできた成果が、大会で十分に発揮できるように万全の体調管理のもと望めるように微力なが らお手伝いしました。大きな怪我や病気がなく大会を終えることができたのは、選手やスタッフの 方々の日頃からの自己管理や予防対策がきちんとできていたからと思います。
 私自身、帯同しながら選手の皆さんのスポーツに取り組む姿からたくさんの感動と元気をもらいました。日常生活程度の手話しかできませんでしたので、手話ができたらもっともっとたくさんの話が選手とできて喜びを分かち合えたのかなと少し残念な思いもありました。聴覚障害をもつ方々のスポーツがもっともっと普及・発展し、活躍する場が増えることを希望します。ろう者の競技大会に帯同という機会を得ることができたことに感謝致します。
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