〔特集〕
学院における養成・研修の取組と卒業生・修了生の活躍

見えない、見えにくい方々の生活を安全で円滑なものにするために〜視覚障害学科
 見えない、見えにくい方々は、生活の様々な場面で不便さや困難さを感じています。視覚障害学科では、見えない、見えにくい方々が自分らしく生きていく道をみつけ、社会の一員として自信を得ることができるよう、生活を総合的に支援し、訓練できる専門家を育てています。
教育内容
 見えない、見えにくい方々が、どのようなことに不便さや困難さを感じているか、それらを知ることを出発点にして、それらを解決し、軽減するための技術や道具の使い方を学んでいきます。講義は、見えない、見えにくい方々のニーズに直接対応する、支援技術の理論と教授法に加え、支援技術の理論を理解し、適切に利用するための基礎知識、よりよい支援をするための、また、信頼関係を結び、人を理解するための知識などが系統的に組み立てられています。
学科の特徴
 具体的な支援技術を学ぶため、「演習」に多くの時間を充てています。「演習」は、学生同士がペアになり、一方が視覚障害者役を、他方が支援者役を交代で体験する授業です。この授業を通じて、見えない、見えにくい方々の生活の不便さや困難さを体験しながら、それらが、技術や道具の活用、様々な工夫を取り入れることにより、解決、軽減されることを検証するとともに、訓練の手順や説明、フィードバックの方法などの教授方法を習得していきます。
卒業生の活躍
社会福祉法人 日本点字図書館
自立支援室 関谷 香織(2006年卒)
画像:職場で活躍する関谷 香織さん
 私が勤務する日本点字図書館は、情報提供施設として図書館サービス、図書の製作、視覚障害者用具の販売、相談等の様々なサービスを提供しております。
 昨年までは、主に用具をお求めになるお客様に対して、お電話や店頭でご相談にのり、生活の中でお困りのことをどのように解決するかのご提案、便利グッズを使用する練習、視覚障害リハビリテーション実施機関のご紹介をおこなっておりました。
 今年度より、指定特定相談支援事業と視覚リハビリテーション事業を当館で開始することになりまして、「相談支援専門員」として勤務しております。
 対人援助職として働くうえで心がけているのは、相手の立場になって考えるということです。
そのためには、想像力を養うこと、色々な引き出しを持つことが必要だと思っております。また、今は困っていなくても、何か困ったとき、「あの人」が何か言っていたな、連絡してみようかなと頭の片隅においていただければと思って働いています。「あなたの名刺はお守りで、障害者手帳にしまっていたのよ」と、病状が進行したとしばらくたってからご連絡をいただいたときはこの仕事をしていてよかったと思いました。
 高齢化などに伴い視覚障害のある人々の増加が予測され、視覚障害リハビリテーションのニーズは今後ますます高まってくると感じております。視覚障害学科に入学しようとしているみなさんと一緒に働けることを楽しみに待っています。一緒に頑張っていきましょう。
社会福祉法人 日本盲人職能開発センター
就労移行支援課 坂田 光子(2009年卒)
画像:職場で活躍する坂田 光子さん
 学院に入学する以前は、都内の社会福祉協議会に勤務していましたが、「何かひとつ、生涯携われる専門性を身に付けたい」と進路を真剣に考え、学院のオープンキャンパスに参加しました。視覚障害学科の先生から「ここでは視覚障害に関するあらゆる勉強ができる」とのお話があり、直感的に自分が探していたものがここにあると感じ、入学を決めました。  その言葉通り、授業は専門学科から実技科目、実習まで多岐にわたり、視覚障害者支援の基礎となる科学的根拠の一端を学ぶ事ができました。特に日常的にアイマスクやロービジョンのシミュレーションレンズを付けて行動したことは大変貴重な経験で、見えない、見えにくいことの困難さを多少なりとも想像できるようになったことが、今でもとても役立っていると感じています。
 現在、私は視覚障害がある方々の就労支援を行う施設に勤務し、11年目となります。
 当事者、関係機関の方からの相談窓口や、当センターでパソコンスキルを身に付けた方の就労支援を担当しています。また、視覚障害者の雇用を検討している企業への助言も行っています。
 視機能が低下した方の中には、働く事をあきらめてしまっている方が多くいらっしゃいます。しかし、ご相談を通して将来への希望を持ち、訓練を経てできることを取り戻し、社会復帰されていく人生の節目を一緒に経験させていただく事は、大変嬉しく、やりがいがあり、この仕事をさせていただいていることに感謝の日々です。
 今では、私の後に、3人の学院出身の後輩が入職し、画面読み上げソフトを用いた実務に必要なパソコン訓練を担当してくれています。これからも、後輩たちと共に視覚障害者が当たり前に働ける社会を築いていけるよう、学院で学んだ初心を忘れず邁進していきます。
社会福祉法人 名古屋市総合リハビリテーション事業団
リハビリテーションセンター 視覚支援課 松枝 孝志(2015年卒)
画像:職場で活躍する松枝 孝志さん
 私は、名古屋市総合リハビリテーションセンター視覚支援課に勤務しています。視覚障害者のリハビリとして歩行訓練・パソコン訓練・日常生活訓練・ADL訓練などを実施している施設です。その中でも、主に歩行訓練を担当させていただいています。
 歩行訓練は白杖の使い方を学ぶことやガイド歩行のやり方を知ることで、安全な移動を実現する訓練です。歩行訓練によって、今まで外に出る事が出来なかった利用者さんが出歩けるようになり、今まで行ったことのない場所に行く姿を見るのは本当に達成感があります。
時には感謝の言葉をいただくこともあり、うれしい限りです。外出時の暑さや寒さにまいる事もありますが(笑)
 こうした仕事のやりがいや面白い所は、利用者さんと直接に関わることで利用者さんの変化が分かり、自分のやった支援が直接伝わるところにあると思います。また、人の人生の一部に直接関わらせていただくことも、他の仕事ではなかなか体験できない事なのではないかと思います。
 仕事に必要な技術や考え方は、視覚障害学科の2年間で教えて頂きました。視覚障害や福祉の事はろくに分からない状態で入学しましたが、経験豊かな教官から丁寧な指導をいただき、身に付けていくことができました。
 人と関わる仕事に興味がある方、どんな仕事がいいかお悩みの方、やりがいあふれる視覚障害者支援の仕事はいかがでしょうか。