〔特集〕
平成29年度運営方針 病院
病院長 西牧 謙吾

 「第2期中期目標 第2
1.リハビリテーション医療の提供
3 .障害者の健康増進、運動医科学支援」
について


 リハビリテーション医療の提供
(1)先進的リハビリテーション医療の推進
 ①難病患者に対するリハビリテーションの充実
 慢性期の難病患者が、生涯にわたる療養と社会生活への参加を進めるための医療に取り組みます。
②脊髄損傷者のリハビリテーションの充実
 中・高年齢頸髄損傷者の特性を明らかにします。研究所、自立支援局、病院の医師、看護師、エンジニア、PT、OTが協力し、脊髄損傷者の排便に関するデータを蓄積、検討します。
③高次脳機能障害者のリハビリテーションの充実
 学齢期の高次脳機能障害者支援を行います。高次脳機能障害者への心理テストバッテリーの再検討に向け、情報の収集を行います。
④先天性四肢形成不全児のリハビリテーション
 先天性四肢形成不全児の作業療法における訓練プログラムの構築、自助具、訓練機器の開発および過去データ分析を行います。
⑤筋電義手リハビリテーションの充実と普及
 筋電義手操作の獲得に向けて、効果的な訓練方法について検討します。
⑥聴覚障害者のリハビリテーションの充実
 先天性難聴遺伝子診断に関する基礎的データの蓄積を行い、必要に応じて、遺伝カウンセリングを行い、適切なリハビリテーションプログラムを提供します。残存聴力活用型人工内耳など、新たな技術を取り入れた補聴器、人工聴覚臓器の適応患者に対して適用、フィッティングを行います。
⑦シーティング・クリニックの充実
 座位保持が困難な症例に対し、研究所とも連携し、シーティング・クリニックを実施し、成果の情報発信に努めます。
(2)安全で質の高い障害者医療・看護の提供
 ①脊髄損傷者への医療・看護
ア 頸髄損傷者のリハビリテーションの推進
 高位頸髄損傷者のQOL向上に向けた自助具を開発します。高位頸髄損傷者の使用ニーズが高いタブレット端末等の入力用自助具作製手引き書を作成します。
イ 慢性期脊髄損傷者の医療
 慢性期脊髄損傷に対して必要な整形外科的治療を実施して慢性期脊髄損傷者の機能維持・回復に取り組み、データを蓄積します。
ウ 脊髄損傷に配慮した看護の提供
 基本的な治療や訓練、生活支援等の目的に沿ったケアを提供します(排便コントロール、褥瘡や皮膚損傷の予防)。
②高次脳機能障害者への医療・看護
 すべての年齢層に対して高次脳機能障害の評価・診断を行い、適応障害をきたしている高次脳機能障害者に対し、社会適応と環境調整を行うための評価入院、自立支援局と連携した包括的なリハビリテーション医療を継続します。在宅生活の質向上のための家族支援に努めます。
③発達障害者への医療・看護
 発達障害者が、生涯にわたる発達保障と社会生活への参加を進めるための医療に取り組みます。
④視覚障害者への医療・看護
 乳幼児から高齢者まで幅広い年齢層に対応したロービジョンケアの一層の充実を図ります。特に、視覚障害の自立支援局利用者に対する眼科診療・ロービジョンケアを継続しやすい環境を提供できるように努めます。
⑤言語聴覚障害者への医療・看護
 眼科外来受診患者、自立支援局利用者の中で、難聴が疑われる者に対して積極的に聴力検査を実施し、視覚・聴覚合併障害患者の発見に努めます。合併障害患者に適切なリハビリテーションを検討します。小児のコミュニケーション障害の一因となる言語発達遅滞、構音障害、吃音などの医療を充実します。
⑥中・高年齢障害者への対応
 在宅、または施設入所する慢性期中・高年齢障害者の機能低下に対し、再訓練入院を行います。評価プログラムを作り、高齢化、慢性化の障害へ及ぼす影響を明らかにし、対策を検討します。
⑦切断者への医療
 高齢で合併症を有する切断者の歩行自立に向け、義足とリハプログラムの検討を行います。多肢切断に対するリハビリテーション事例を重ね、自立のための阻害因子とその克服について検討します。
⑧薬剤管理・服薬支援
 障害者への服薬支援の充実に取り組みます。
⑨医療安全管理
 医療安全管理委員会組織による医療安全向上のための諸活動を推進します。感染症対策委員会組織による感染防止対策のための諸活動を推進します。そのために、医療スタッフの専門性の充実を図る他、接遇、病院環境改善を推進します。
⑩地域・関係部門との連携体制の強化
 地域の医療機関等からの当院への転院・通院希望の相談について、患者増、患者サービス向上を目指して円滑な入院・受診相談支援を行います。当院入院患者の退院後や外来患者において、円滑な在宅生活移行や施設利用等が可能となるよう支援します。入院及び通院患者で自立支援局等の利用を希望する患者について、円滑な施設利用が開始できるよう支援します。地域の医療機関、福祉事業所等と連携し、情報収集や情報交換を図ります。
(3)障害者への健康増進・保健サービスの提供
 病院(外来・入院・人間ドック)、自立支援局において運動・栄養・生活指導の面から健康づくりを推進します。ドーピングに関する相談業務の周知を図り、選手が積極的に相談できるように取り組みます。センター外との施設とも連携し、障害者の健康増進サービスが広く提供される基盤構築に貢献します。
(4) 臨床研究開発機能の強化
 病院の研究開発機能を整備し、障害に特化した臨床研究開発を行います。
@臨床研究の体制を整備し、新たに障害者総合支援法の対象となった難病、いまだ支援方法が確立しない成人の発達障害への研究等、国の政策立案や行政施策に資する臨床研究を行います。
A麻痺による二次性の骨萎縮について骨密度測定器などを用いて評価し、骨折などの二次障害予防について検討します。
B車いす利用者に生じる二次障害予防として、上肢障害を中心にデータの収集を行います。
C義肢装具に関する臨床研究について、全国共同研究施設と連携し、データを蓄積し、その結果をまとめ、学会発表を行います。
D脳損傷者の安静時脳活動が、外的刺激課題や受動的刺激課題に対してどのように変化するのかを認知行動障害との関連から解明し、脳の可塑性について検討します。
E研究所と連携し、ロービジョン患者の白内障目標屈折値の決定における課題を明らかにします。
F網膜色素変性症を対象に眼球運動と視機能および日常生活動作との関係を明らかにします。
G吃音の診療に際し、より客観的な評価方法や治療方法の導入を検討します。吃音の小児に対して新しい治療法を診療科と言語聴覚療法部門と共同で試行し、その成果を分析・検討します。
 言語聴覚療法部門では、病院及び研究所において、障害者の臨床の基となる基礎研究を実施し、臨床に応用します。
(5) 臨床サービス、臨床研究開発の情報発信
  先進的障害者医療、リハビリテーション、健康増進、運動支援の成果を蓄積し、情報発信を推進します。
(6)人材の育成
  @研修生、見学の受け入れ
 国内・海外からの研修生や、見学の受け入れを行い、国際的な人材育成を行います。
A院外研修、資格取得の促進
 院外における研修機会を活用し、専門的能力の育成を図ります。各職種の専門的な資格認定制度に則り、障害者センターに必要な特殊技能や資格の取得を促進します。
(7)病床利用率等の向上
 入院病床利用率等の病院利用に関する指標を検討し、定期的に管理するなどその利用の向上、非効率な業務の見直しに努めます。

 障害者の健康増進、運動医科学支援
(1)健康増進プログラムの開発及び提供
 様々な障害のある当事者が、その特性に応じて心身の健康を維持・増進できるよう、健康を医学・保健・運動・栄養の面から捉え、その成果が多くの施設で利用可能となることを念頭に研究・開発を行います。また、現場において実施にあたる人材育成を行います。
①施設を利用した健康増進プログラムの開発・普及、ガイドラインの作成
②病院(外来・入院・人間ドック)、自立支援局における健康増進プログラムの提供
③障害者・高齢者の加齢に伴う移動機能障害に関する調査・研究
④人材育成
(2)障害者競技・レクリェーションへの支援と医科学研究の推進
 病院を中心に、研究所、自立支援局、学院及び関係団体と連携し、以下のとおり医科学支援と競技環境支援を実践します。
①医科学支援
②障害者に関連する医科学研究の実施
③障害者スポーツ用具の開発
④競技環境支援の実践
⑤障害者競技・レクリェーションへの参加者の拡大

 災害等緊急時のリスク管理の充実
 〈「第2期中期目標 第3 4.災害等緊急時の危機管理の充実」関係
(1)災害等緊急時の緊急対応体制を明確にし、緊急時の実践準備を常に整える。
 ①病院全体の緊急時連絡網の周知徹底を常に行います。
②入院患者安全確認、誘導、搬送の方法について、外来患者、面会者の誘導の方法についても緊急対応に備えます。スタッフに周知し、緊急対応に常態的に備えます。
③避難訓練や研修会を通じて、医療機関における緊急度、患者の重症度等に関する知識を浸透させ、基本的な備えに関する心構えを育成します。
④緊急時の患者の処置、体調管理に関する物理的な準備を常時確認できるよう体制を整備します。