〔特集〕
病院ロービジョン訓練および眼科での移動支援
病院 リハビリテーション部 中西 勉

  病院のリハビリテーション部ロービジョン訓練および眼科での主な移動支援には、視覚障害のある患者さん(以下、患者さん)が眼科を受診する際の職員による手引き(以下、移動介助)と、ロービジョン訓練での歩行訓練などが該当します。

眼科での移動支援

  眼科での移動支援は移動介助が中心となります。移動介助は、視覚に障害のある人が目が不自由ではない晴眼者と一緒に安全かつ効率的に歩行する方法です。眼科職員が患者さんを移動介助することがあります。その目的は、待合から診察室や検査室まで安全かつ効率的に患者さんが移動できるよう介助することです。特に検査場面では配慮が必要です。患者さんの中には、暗いところではものが見えない人も少なくありません。検査は暗室で行われるものもあり、そのような患者さんにとって暗い検査室は大変移動しにくく、かつ障害物の存在に気づきにくい場所です。視能訓練士が検査室まで移動介助し、患者さんが検査器具に身体や顔面を当てて負傷することがないよう細やかな配慮を行っています。

ロービジョン訓練での移動支援(歩行訓練)

  ロービジョン訓練での歩行訓練の主なものは、患者さんや家族などに対する移動介助と患者さんに対する白杖を使う白杖歩行訓練が該当します。これらの訓練は、生活訓練専門職が担当しています。当訓練部門は病院にあるため、訓練施設の利用に必要な障害者福祉サービス受給者証は不要であり、見えにくさがあれば対応可能です。歩行訓練の対象は、光を感じない全盲の方から障害の軽い方まで幅広く対応しています。生活訓練専門職が対応した件数のうち、歩行訓練は約5割を占めています。歩行訓練は、ニーズの高い訓練項目と言えます。訓練形態は、外来または入院です。通院の訓練回数では、1、2週間に1回程度の人が最多となっています。入院による期間は1週間から2週間が多いのですが、ニーズによりさらに長いこともあります。なお、障害者福祉サービスが利用可能で、かつ重度の視覚障害がある場合、当センターの自立訓練(機能訓練)や他施設も紹介しています。
  移動介助の訓練内容は、介助者の肘のあたりをつかんで歩く方法(基本形)、狭い場所を通り抜ける方法、ドアの通過、階段の昇り降り、椅子やテーブルへの介助などがあります。写真1は、基本形で歩いている様子です。介助者は、足元や左右の障害物に患者さんが接触しないよう確認しながら歩く必要があります。家族が介助する場合、患者さんの背中や腕を押すように歩いたり、手をつないで誘導する場面をよく見かけます。これらの方法は必ずしも安全かつ効率的ではないため、家族にも移動介助の方法をお伝えしています。訓練後、患者さんや家族から歩行が楽になったという感想をいただくことがあります。訓練効果を実感する場面です。白杖歩行訓練は、患者さんの希望や視機能により訓練項目に違いがあります。目が不自由であることを周囲に知らせるために白杖を持ちたいと希望し、かつ障害が軽い患者さんには白杖の紹介やその機能の説明で終わることもあります。一方、仕事帰りに夜道がよく見えないため白杖を使いたい、あるいは日中も白杖を操作しながら歩きたいという患者さんには、白杖を振りながら足元を確認して歩く訓練を行います(写真2)。近隣在住の患者さんについては、基本的な訓練を終えてから希望により自宅近辺での訓練も実施しています。
写真1:移動介助(手引き)の基本形 写真2:白杖を使用した歩行訓練のイメージ
写真1 移動介助(手引き)の基本形 写真2 白杖を使用した歩行訓練のイメージ

その他の移動支援

 ロービジョン訓練では、当部門以外の職員に対して移動介助の方法を講習しています。他の部門からの依頼を受け新任職員に視覚障害について説明し、移動介助の方法をお教えしています。さらに、研修委員会の依頼により病院職員を対象とした研修会においても、同内容を実施しています。多くの病院職員が移動介助できることにより、患者さんにとっては受診時や入院時の不自由さが軽減されると考えます。
 実際の訓練ではありませんが、同行援護制度の紹介も行っています。この制度は、外出時の歩行支援と外出先での代筆や代読など必要な視覚的情報の支援を行うサービスです。視覚に障害があると不慣れな場所に出かけることが困難になります。さらに外出先で文書を読んだり、文字を記入しなければならないこともあります。この制度では、サービス提供者が外出時の移動を支援し、さらに外出先での文書の代読や代筆なども行います。そのためこの制度を紹介しています。

 以上のような移動支援により患者さんがセンター病院を利用しやすくなるとともに、日常的な外出においても不自由さが軽減されると考えます。