〔特集:①〕
ロンドン2012パラリンピックに参加して(ゴールボール女子)
理療教育・就労支援部理療教育課 教官 江K直樹


<はじめに>
 2012年8月22日から9月11日の約三週間、2012ロンドンパラリンピックにゴールボール女子日本代表ヘッドコーチとして参加しました。選手6名、コーチ3名のチーム構成で予選4試合、決勝3試合を戦い、その結果、金メダルを獲得し、アテネ大会銅メダル以来、また日本団体競技初の金メダル獲得となりました。
 ここに至るまで国内合宿、海外遠征を重ね、その中で多くの方々よりご支援、応援を頂き、パラリンピックという大舞台で、選手個々の力が最大限に発揮されたと共に、またチームとしてのまとまり=チーム力が、今回最高の結果へと結実させることができました。

<試合結果>
 女子の参加国は10ヵ国で、5ヵ国ずつ2グループに分かれ総当たりの予選リーグと、各リーグ上位4ヶ国、計8ヵ国による決勝トーナメントで試合が行われました。
 日本は、グループDでパラリンピック前のランキングは6位、同グループには、ランキング2位のアメリカ、3位のスウェーデン、4位のカナダ、8位のオーストラリアがいました。
 予選リーグ戦の結果は次の通りです。
 8月31日 対オーストラリア 3対1 勝ち
 9月1日  対アメリカ     2対1 勝ち
 9月2日  対スウェーデン  0対0 引き分け
 9月3日  対カナダ      0対1 負け
 予選成績  2勝1敗1分け(勝ち点7)グループD2位で予選を通過しました。

女子予選リーグ順位
Cグループの順位
 1位中国、2位イギリス、3位ブラジル、4位フィンランド、5位デンマーク
Dグループの順位
 1位カナダ、2位日本、3位スウェーデン、4位アメリカ、5位オーストラリア

決勝トーナメント
 9月5日 準々決勝
   対ブラジル(Cグループ3位) 2対0 勝ち
 9月6日 準決勝
  対スウェーデン 1対1
   エクストラスローの結果 3対2
   合計 4対3で 勝ち
※ 延長戦でも決着がつかなかったため、エクストラスロー
 (サッカーのPK戦のように1対1で攻撃と守備を交互に行う)で決着
 9月7日 決勝
  対中国 1対0 勝ち 金メダル獲得

写真 予選リーグ第2試合 対アメリカ戦
予選リーグ第2試合 対アメリカ戦


<大会を通じて>
 ゴールボール女子チームの今大会の目標は「金メダル、世界一」を合い言葉にチーム作りを行いました。代表選手の年齢は10代から30代まで、福岡視力センター卒業生が3名、大学生2名、高校生1名でした。それぞれに視覚に障害をもってからスポーツを始め、目標に向かって諦めなければ必ず実現することを証明した選手に、本当に感謝しています。国内合宿は誰もが参加できますが、誰もが楽しくできる環境ではなく、月に1度の厳しい合宿では課題を克服することを常に求め、合宿毎に選手の順位付けして、努力した者のみが生き残るという、過酷な面もありました。外国選手と体格では劣る日本の選手が、いかにして勝つか、守備隊形の工夫、攻撃力の向上をめざしました。その結果、追い求めた日本チームらしい姿をパラリンピックという大舞台で展開することができました。
 ヘッドコーチという立場では、試合の事を考えることはもちろん、長期にわたる大会期間をいかに過ごすか、メンタルケアの充実に努めました。大会日程は、22日に日本を発ち、23日から27日まで公式練習、29日夜開会式、30日から9月7日まで競技会、その後9月8日にウィルチェアーラグビーの応援、9日閉会式、10日解団式、その後帰国と、過密日程でした。その中で、現地入りしてからはチーム力アップ・コミュニケーション能力の向上を図る目的で、心理サポート講習会等を実施し、選手間、選手とスタッフ、さらにスタッフ間の絆をさらに強化することができました。また長期間同じ人と共に生活する上で誰もが感じるストレスの軽減、さらに試合や勝負へのプレッシャーに対する心の安定(平常心)を常に保つことができました。
 日本に帰国後、多くのメディアの方に金メダル獲得について取り上げて頂き、ゴールボール競技が広く認知されるようになってきました。その中でパラリンピック二連覇を期待する声がすでに聞かれますが、選手には今まで通り今できる事をしっかり行い、時には特別な強化も必要ですが基本を大切にして練習に励み、また多くの方々にゴールボール競技を楽しんでもらえるように積極的な普及活動にも力を入れていきたいと考えています。
 最後になりますが、ゴールボール競技を集中できる環境作りとして、合宿では国立障害者リハビリテーションセンター第2体育館を中心に実施しました。同じ敷地内に体育館と宿舎が整う施設は非常に少なく、視覚障害の方に利用しやすく、外部からのボランティアの受け入れに対応することができ、施設利用で多大なご配慮を頂きました。
 これまで合宿でお世話になった施設の方々、ボランティアとして携わって頂いた皆さん、また多大な応援をして頂いた皆さん本当にありがとうございました。

写真 金メダルを手に勝利の笑顔
金メダルを手に勝利の笑顔