平成13年度から実施されてきた高次脳機能障害支援モデル事業を経て、平成18年10月の障害者自立支援法施行時に、主たる対象者を高次脳機能障害にした障害者福祉サービスにおける「自立訓練(生活訓練)サービス」を開始した。ここでは、「自立訓練(生活訓練)サービス」の事業指定を受けてから5年経過したことをふまえ、利用者の状況を中心に報告いたしたい。
「自立訓練(生活訓練)サービス」利用者の状況について
「自立訓練(生活訓練)サービス」利用者の状況を過去5年間さかのぼって整理した。対象は「自立訓練(生活訓練)サービス」の事業指定を受けた平成18年10月から平成23年9月までの間に、訓練開始した利用者である。
表1 男女別
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表2 年齢構成別
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15歳〜19歳 |
4 |
20歳〜29歳 |
29 |
30歳〜39歳 |
25 |
40歳〜49歳 |
14 |
50歳以上 |
1 |
計 |
73 |
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表3 障害原因別
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交通事故 |
33 |
転落・転倒事故 |
3 |
疾病 |
33 |
その他 |
4 |
計 |
73 |
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表4 障害者手帳別
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身体障害者 |
38 |
精神保健福祉 |
15 |
身体+精神 |
19 |
なし |
1 |
計 |
73 |
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先ず表1のとおり、この間に訓練開始した者は73名であった。男性が64名と全体の87.5%を占めている。年齢構成別(表2)は、20歳台が多く続いて30歳台が多い。全体の平均年齢は31.9歳であった。次に障害原因別(表3)では、脳梗塞やくも膜下出血等による疾病と交通事故が同数であった。次に障害者手帳の取得状況(表4)では、身体障害者手帳のみを取得している者が最も多く38名であった。また、精神保健福祉手帳を有する者は、身体障害者手帳と2種類有する者も含めると34名であった。
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日課に添って活動できるよう支援 |
調理を通した生活管理能力の向上 |
出身地(表5)は、近隣の埼玉県、東京都の順に多く、全体の61.6%を占めていた。一方で北は秋田県、山形県、南は福岡県、沖縄県からの利用もあり出身地は多岐にわたっている。
最後に訓練終了後の帰結(表6)を見ると、平成23年9月末の段階で73名中62名が訓練を終了している。そのうち、本センター就労移行支援事業へ移行する者が最も多く27名、訓練終了者全体の43.5%となっており、多機能型事業所としての利点を十分活かしていると言える。なお、訓練終了者の平均利用日数は約282日であった。
表5 出身地別
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秋田県 |
1 |
東京都 |
21 |
山形県 |
1 |
新潟県 |
1 |
福島県 |
1 |
山梨県 |
2 |
茨城県 |
8 |
岐阜県 |
1 |
栃木県 |
1 |
静岡県 |
2 |
群馬県 |
5 |
福岡県 |
1 |
千葉県 |
2 |
沖縄県 |
2 |
埼玉県 |
24 |
計 |
73 |
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表6 訓練終了後の帰結
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家庭復帰 |
13 |
復学 |
2 |
就職 |
1 |
職場復帰 |
5 |
就労移行支援へ移行 |
27 |
職リハへ移行 |
7 |
職業能力開発校(職リハ除く) |
1 |
その他の施設 |
2 |
中途解約 |
4 |
訓練継続中 |
11 |
計 |
73 |
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現在、「自立訓練(生活訓練)サービス」を利用している高次脳機能障害者は、食事や入浴等に見守りや促しが必要な方から職場復帰に向けて支援している方まで幅広い状況にある。また、夜間の支援体制が十分ではない現状があり、宿舎環境も高次脳機能障害に適しているとは言い難い。さらに全国からの利用者を対象にしているため、訓練終了後に利用者が生活する地域の相談支援事業所などの関係機関との連携や引継ぎが大きな課題となっている。このように多くの課題があるが、今後も多機能型事業所の利点を活かしながら、平成23年10月に設置された高次脳機能障害情報・支援センター及び地域の関係機関等と連携を深め、サービスの充実に努めてまいりたい。