〔巻頭言〕

「リハセンターと仮面ライダー」

自立訓練部長  河原 勝洋


 現在、リハセンターは、建築工事の真っ最中です。本館、講堂を病院前の旧駐車場に移し、その本館、講堂の跡地に病院を移転するというものです。現建物が昭和56年以前の建築で、耐震基準が不足し、また、築30年以上経過し老朽化してきたとの理由のようです。
 現在の本館、病院の建物は、今では普通の建物で、これといった特徴もありませんが、講堂については、正面から見ると現在でもユニークな形であり、建築当時は、さぞ斬新な建物であったろうと思われます。事実、この講堂前で、仮面ライダーや戦隊シリーズのテレビ撮影があり、仮面ライダーや戦隊レンジャーと悪役組織の怪人や戦闘員が飛び跳ねていたそうです。
 子供向けの空想科学ドラマでは、よく斬新な建物が出てきます。ウルトラマンのウルトラ警備隊の本部は、京都市にある京都国際会議場が使用されていましたし、戦隊ものの格闘シーンには、代々木公園の体育館や、旧横浜ドリームランド(遊園地)内のホテルエンパイア(五重塔の形をした高層ホテル)などの近未来的な建物がよく登場していました。
 リハセンターが建築された昭和53〜4年頃は、この地は一面の原野であり、その中に巨大な建物が何棟も建ち上がり、近隣の人達や関係者の驚きの様子が、センターの5周年記念誌から伺い知る事が出来ます。

 テレビ撮影と言えば、厚労省にいたとき、平成元年に日本社会事業大学が清瀬市に移転した後の、敷地の管理をしていたことがありました。移転前の大学は、原宿の一等地にあり、大学の本部建物は、戦前に造られた旧海軍の将校会館で、趣のある洋館でした。テレビドラマや映画の撮影に使用したいとの問い合わせが多くありましたが、敷地の管理が数人のガードマンのみで、1社に許可すると次から次へと撮影依頼が来るため全てお断りしていました。
 あるとき、Iプロダクションから使用依頼がありました。このプロダクションは、映画俳優のI氏が設立した会社で、当時、番組は終了していたのですが、派手なカーアクションや火薬を使った爆破シーン、毎シリーズの最後に、刑事役の若手人気俳優の殉職シーンなどが有名な刑事ドラマを制作し、毎回、高視聴率を取っていました。
 事情を説明し、お断りしたのですが、数日後、敷地を管理しているガードマンから血痕が点々と落ちているとの報告が来ました。慌てて警察に連絡し調べてもらったところ、血痕は映画等の撮影で使用する「血のり」でした。おそらくIプロダクションが勝手に使用したのであろうと思い電話をしたところ「知らない。」「使用していない。」の一点張りでした。そこで、「あなたの所のプロダクションが制作しているテレビドラマを全て録画し、もし、社大跡地で撮影したものと確認できたら、不法侵入で訴える。当然、御社の社長からも事情を聞くことになる。」(社長は有名俳優)と言い電話を切ったところ、しばらくして役員の方から電話があり、使用したことを認め、謝罪がありました。
 その後、この敷地の管理は関東財務局へ移管され、当方の管理は終わったのですが、現在は洋館も壊され、大きなビルが何棟も建っています。

 さて、当リハセンターも平成26年までには、新たな本館、講堂、病院棟が相次いで完成するようです。また、この建物の前で、仮面ライダーが飛び跳ねる事が出来るかどうか分かりませんが、とはいえ、この建物群が新たなリハセンターの象徴となり、センターが目標とする、障害者の自立や社会参加の支援のため、障害者リハビリテーションの中核機関としての役割を果たすことが出来るよう、私達も建物に負けないよう、新たな知識の習得を図るなど、一層の研鑽に努めなければならないと感じています。