〔震災レポート〕
被災地での活動状況報告
発達障害情報センター 鈴木さとみ


 はじめに、今回の震災に関し、改めて犠牲者の皆さまのご冥福をお祈りするとともに、被災者の方々に心よりお見舞いを申し上げます。また、支援活動を行っている方々に敬意を表し、被災された方々が少しでも早く安寧な生活を送ることができますよう、お祈りいたします。
 震災から2ヵ月後の2011年5月7日から13日(7日間)にかけて、日本発達障害ネットワーク(JDDネット)の東日本大震災・被災地派遣チーム(第2陣)に参加し、岩手県・宮城県を訪問しました。チームメンバーは、大学教員や臨床心理士、精神保健福祉士8名で構成されました。
 目的は、発達障害児者とご家族、支援者の現状を把握し、今後の継続的な支援活動につなげるための情報収集及び基盤づくりを行うことです。県の障害福祉課や教育委員会、児童相談所、福祉施設、教育センター、特別支援学校、親の会、被災者の方などからヒアリングを行い、意見交換、アセスメント支援等を実施しました。
 岩手・宮城の津波被害のあった沿岸部は、連日、メディアで見聞きしてきましたように、津波が押し寄せてきたかどうかで被害の状況がかなり異なりました。実際に、がれきの中に立ちますと、その被害の甚大さに圧倒されました。震災から2ヶ月後の当時も、非日常が続いており、そういう中で、生活を取り戻そうとされている状況でした。
 障害児者の安否確認については、障害者手帳のリストをベースにすすめられていました。また、役所が流された地域は、NPOなどが避難所を1つ1つ回りながら状況把握に努めていらっしゃいました。しかしながら、岩手・宮城の沿岸部では、「障がい」への偏見や抵抗感が強く、一見して分かりにくい高機能広汎性発達障害の場合、診断や支援が積極的に行われることについては躊躇いのある地域でした。診断前支援については、地域差があり、支援者が把握しているケースは少ないようでした。また、把握している場合でも、限られた支援者に情報が一極的に集中していたため、その方がお亡くなりになった地域では,公的なサービスにつながっていない方たちの状況把握が困難になっていました。今後、地域でネットワークの網を張っていくことが重要になってきます。
 東北の方々は、がまん強いとよく耳にしましたが、実際、自閉症のお子さんをお持ちのお母さんは、「私よりもずっと大変な人がいるから」と、周囲に助けを求めることも遠慮されて、大変なご苦労をされていました。しんどさを吐き出す場がなく、地域で孤立していかないか、懸念されました。また、支援者の方も被災者であり、相当な疲労感やストレスを抱えており、学校の先生やNPOのスタッフなど、現場で活躍されている方々は、使命感や責任感、現実に動ける範囲や裁量権などとの間で葛藤されていました。
 今後は、中長期的スパンで心理的・社会的、物理的支援が継続されていくことが必要だと思います。特に、中心的役割を担う現地の支援者のバーンアウトを防ぐため、側面的支援を行っていくことが重要です。また、今回被災していない地域についても、普段からソーシャルサポートネットワークが機能するような社会を作っていくことが、災害などの緊急時に、特に、社会的に弱い立場に置かれがちな人の孤立を防ぐための基盤になるのかと思いました。
 なお、JDD被災地支援チーム第2陣の中間報告は、内閣府第32回障がい者制度改革推進会議「災害と障害者について」において、資料として提出されています。詳しくは、http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/kaikaku/s_kaigi/k_32/pdf/s2-2-12.pdfにてご覧いただけます。



写真 岩手県沿岸地域1
岩手県沿岸地域①
 
写真 岩手県沿岸地域2   写真 岩手県沿岸地域3
岩手県沿岸地域②   岩手県沿岸地域③