〔平成23年度運営方針(重点事項)①〕
研究所
 

 研究所では、国立障害者リハビリテーションセンター中期目標を踏まえ、平成23年度の運営方針と重点研究課題を次のように策定しました。中期目標に置ける研究所の中心課題は、「医療から福祉までの臨床現場を有する特性を活かし、障害全体を視野に入れた総合的リハビリテーション技術および福祉機器の研究開発」です。


Ⅰ. 研究所の運営方針

1 新しい研究体制の始動

 新たに発足した脳機能系障害研究部の3つの研究室(高次脳機能障害研究室、発達障害研究室、脳神経科学研究室)の研究体制を整備し、それぞれの研究室の中期目標への関わりを明確化するとともに、今後の研究のロードマップを作成します。

2 コア・コンピタンス(中核技術)の確立

 総合的リハビリテーション分野における研究所の独自性を発揮するために、中核技術の確立に努めます。具体的には、脳神経科学、ロボット、再生医療、情報技術などの先端技術の導入をさらに推進します。

3 臨床現場との連携強化

 病院や自立支援局などの臨床現場のニーズの把握並びに研究所が有する技術シーズの紹介のために、センター内勉強会・コロキウム・研究所公開・業績発表会などの機会を活用して職員間のさらなる交流を図ります。また、新しく設置された臨床研究開発部を介して、センター横断的な研究課題の企画並びに研究協力を推進します。

4 障害に関する情報の収集と発信

 発達障害情報センターに続いて、平成23年度には高次脳機能障害情報・支援センターの設置が決まりました。これらのセンターによる発達障害と高次脳機能障害に関する情報の収集と提供機能を強化します。また、これまで臨床現場で蓄積してきた臨床データを発掘・解析して障害特性に関するデータベースを構築します。
 平成22年度の補正予算で、福祉機器の臨床評価や展示・紹介を行うモデルルームの設置が認められましたので、ここを福祉機器の開発研究・性能評価等の成果情報の発信の場として活用していきます。

5 センター外諸研究機関との協力体制の強化

 最先端の技術シーズと臨床現場のニーズのマッチングを図るため、技術シーズを有する大学・研究機関・企業などとの共同研究体制を強化します。その前段階として、障害当事者・研究者・福祉機器開発企業の技術者などが一堂に会して各自のニーズとシーズを紹介し、意見交換を行う場を設けます。

6 競争的資金の獲得

 資金源の多様化と外部との競争的環境による研究水準の高度化を目指し、厚生労働科学研究費補助金、文部科学研究費補助金をはじめとする外部で公募する競争的研究資金の獲得に積極的に参入し、研究資金の確保に努めます。

7 政策立案への協力

 「障害認定の在り方に関する研究」や「福祉機器の利活用のあり方に関する研究」等を通して、障害保健福祉政策立案への協力を進めます。


Ⅱ.平成23年度重点課題

1 ブレイン−マシン・インターフェイス(BMI)に関する研究

 障害の現場における実証評価を重点的に行う研究を展開し、その結果をフィードバックし、さらなる対応機器やアプリケーションの改良と拡充を含めBMI型支援機器の多機能化・最適化を行います。

2 軽度認知症者を対象とした情報支援機器の開発と実用化及び適合手法の確立

(1) 高齢者の記憶と認知機能低下に対する生活支援ロボットシステムの開発

 軽度から中等度の認知症者、軽度認知障害・物忘れのある健常高齢者を対象とした生活支援ロボットシステムを開発します。

(2) 支援機器を用いた認知症者の自立支援手法の開発

 認知症者の地域での暮らしの継続を支援するための機器を開発し、昨年度作成した評価プロトコルに則り、有効性の検証実験を実施します。

3 脊髄損傷者の歩行機能に対するニューロリハビリテーションに関する研究

 慢性脊髄損傷者を対象とした歩行アシストロボットロコマットを用いた歩行訓練研究、不全脊髄損傷症例に対する血中バイオマーカーを用いた初期重症度評価研究、ラット脊髄損傷モデルを用いた訓練による歩行機能改善メカニズム解析研究を実施します。

4 先端福祉機器の臨床評価に関する研究

 肢体不自由者用ロボットアーム、移乗移動支援ベッド変形型ロボットシステム、電動車いす片流れ防止システムの臨床評価を実施します。