〔センター行事〕
第27回業績発表会開催報告(2)
②優秀賞受賞者コメント
管理部企画課


 平成22年12月22日(水曜日)に行われた、第27回業績発表会で優秀賞を受賞された6名の方々からコメントをいただきましたのでご紹介いたします。
優秀賞
  自立支援局理療教育・就労支援部 近藤 和弘
  自立支援局自立訓練部 菅原 由貴子
  自立支援局総合相談支援部 阿部 真市
  病院看護部 吉田 尚子
  研究所感覚機能系障害研究部 蔡  暢
  研究所福祉機器開発部 山中 康弘

 

自立支援局理療教育・就労支援部 近藤 和弘
演題:「地域に根ざした職場体験実習」


障害者自立支援法が施行され、平成18年10月から当センターは就労移行支援を開始しました。開始にあたり支援内容について検討を行いました。課題として①利用の対象地域が全国であることから、利用者の地元での実習先の確保が難しいことに対応する支援の必要②高次脳機能障害、知的障害、精神障害を併せ持つ利用者の増加に伴い、支援方法の見直しが必要③基本的社会人としてのマナー、体力、コミュニケーション能力等といった働くための力を身につける等の企業側のニーズに対応する支援の必要④センター修了後にも自らの力で課題を解決したり、必要な支援を得ていく力を付けるといった視点が必要と考えました。

就労移行支援以前は、職業技能獲得を中心として、施設内訓練(Off-JT Off-the-job Training)を重視した支援内容でしたが、上記の課題を解決するために、体験や実践を重視して積極的な職場体験実習(OJT On-the-job Training)を取り入れた支援内容とすることとなりました。

職場体験実習を受け入れる会社にとりましては、昨今の社会情勢を反映し会社経営が大変厳しいこと、当センター利用者は就労に必要な体力や意欲・技術等がまだ十分に整っていないこと、また、様々な障害の特性に応じた対応が必要であることなどから大変な苦労が予想されます。

幸いにも、年度を重ねるごとに職場体験実習を受けていただく所(一般企業・特例子会社・障害者対象委託職業訓練協力事業所・就労継続支援施設等)が増えてきました。利用者にとっては、社会での実体験は施設内での訓練では得られない緊張感があり、大変貴重な経験となります。実習の機会が増えたことや、職場開拓・就労マッチング支援の充実により、当センターの就職者数は増えてきました。

未だ様々な理由で実習が出来ない利用者もおります。今回発表した「地域に根ざした職場体験実習」は、地域であるからこその利点が多くあります。その結果、今まで以上に多くの利用者が実習できる機会が得られました。詳しくは、今月号国リハニュース「特集〜地域の中の国リハセンター(3)」に掲載の記事を参照ください。

今回の受賞を励みにして今後も就労移行支援の充実に向けて努力してまいります。最後に、紙面を借りまして、実習受け入れをしていただいています事業所様に感謝しお礼申し上げます。



自立支援局自立訓練部 菅原 由貴子
演題:「自立訓練部における高次脳機能障害者への取り組み3」


平成22年度業績発表会にて優秀賞という過分な評価をいただき、誠にありがとうございます。高次脳機能障害支援モデル事業における標準的プログラムに基づいた当部での取り組みについては、平成20年度から毎年報告をさせていただいております。試行錯誤を繰り返して具体的な訓練プログラムの開発や効果測定の整備を行ってまいりましたが、課題は山積で、まだまだ山の中腹にも至っておりません。優秀賞などいただける成果は挙がっておりませんが、より有効な支援サービスを利用者に提供できるよう、課題を整理し、またデータを蓄積・分析しながら一歩一歩頑張っていきたいと思います。ありがとうございました。



自立支援局 総合相談支援部総合支援課 阿部 真市
演題:「就労移行支援修了者に係る各地域の支援団体や社会資源のデータ化」


この度は、このような過分な評価をいただきありがとうございました。受賞者発表の前までは、優秀賞をいただけるとは夢にも思っていなかったので大変驚きましたが、私を含め、課員一同嬉しく思っております。

今回発表させていただいた社会資源のデータ化については、昨年度から自立支援局の重点事項として取り組んでいるものです。昨年度、今年度と続けて発表させていただき、昨年度についてはデータの集積方法やその内訳などといった内容でした。それを踏まえて、今年度は集積したデータを活用して利用者支援を行った結果の報告という形での発表をさせていただきました。今年度、就労移行支援利用者の就職率が上昇したことについて、私どもが行ってきたこの取り組みが多少なりとも貢献できたのではと感じています。就労に関する支援が必要な方もいれば、地域で生活するにあたって支援が必要な方もいます。地域支援センター等地域の様々な資源との積極的にかかわる重要性を改めて実感しているところです。

当課の各ケースワーカーが地域の支援機関と調整を行うことで様々な情報を得ることができますが、支援機関(資源)といっても様々です。それぞれ得手不得手がありますので、利用者支援を通して経験的に得られるそれぞれの支援機関(資源)の特徴をデータとしてまとめ、それを共有することが他の利用者支援にも有効となります。これからも活きた情報をデータ化し、支援に活用できるようにしたいと考えています。また、それらの情報は我々の財産に留めるのではなく、ホームページ等を活用し発信したいと考えています。

今回発表させていただいた取り組みについては、ケースワーク業務を行ううえで当然行うべきことだと思っています。しかし、そうした取り組みを一人一人のケースワーカーが少しずつ積み重ねてきたことで、今回の受賞に繋がったのだと考えています。最後に、就労移行支援の利用者への支援に協力していただいている他部門の職員、また、実際に地域で修了者の支援をしていただいている方々に、厚くお礼申し上げます。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。


 

病院看護部 吉田 尚子
演題:「リハビリ患者に対する 看護必要度評価」の矛盾点」 
     〜看護時間測定結果から見えたこと〜


平成22年度第27回業績発表会において優秀賞をいただきました。評価してくださった諸先生方にこの場を借りてお礼を申しあげます。

この研究は、急性期病棟に入院する患者のケアに関する調査データから作られた「看護必要度の日常生活機能評価表」が、回復期リハ病棟に入院する患者のケアを正しく評価できるのか、その妥当性の検証を試みたものです。

看護必要度とは診療報酬の算定基準となり、厚生労働省が掲げる地域連携医療・地域包括ケアにおける急性期〜回復期〜維持期の連続した指標ともなるものです。看護部では一年前から地域連携パス・回復期リハ病棟を導入するという病院の方針に基づき看護必要度の評価を開始しました。その中で、従来からBI(機能的評価:Barthel Index)やFIM(機能的自立度評価表:Functional Independence Measure)でADL(日常生活動作:Activities Of Daily Living)を評価してきた国リハの看護師から”看護必要度の項目がリハビリ患者のケアを適切に評価していないのではないか”という疑問の声が上がりました。リハビリにおける患者の状況の評価と患者に必要なケアに関する評価は視点が異なります。患者の状況を正しく評価しているかどうかという疑問を大切に、ケア量において最も手をかけなければならない項目とは何かという視点で研究を進めました。結果、「看護必要度の日常生活機能評価」には国リハに入院している患者に関して適切に評価する内容が不足していることがわかりました。

看護必要度のように新たに導入される評価の場合、病院や地域連携の現場などで活用されるようになって初めて意味があります。今後も、看護必要度を通してリハ看護に貢献できるような研究を行いたいと考えております。

この研究は患者の傍らで24時間ケア時間調査を行って下さった師長さん方の活動に負うところが大きく、喜びを分かち合うと共に、ご協力頂いたすべての皆様に感謝の気持ちでいっぱいです。



研究所感覚機能系障害研究部 蔡 暢
演題:「発達性吃音の発話における第3経路の役割」


今回発表いたしました「発達性吃音の発話における第3経路の役割」をご評価頂きまして誠に有難うございます。

発達性吃音において脳の解剖・活動の異常(例えば、前後の言語野を連絡する弓状束や、前の運動性言語野であるブローカ野)は既に報告されていますが、発話経路についてはまだ議論されていません。我々が昨年度発表した研究においては、非吃音者を被験者として、脳内辞書(「直接経路」)を使って発話される、親密度が高い単語(よく知っている単語)と親密度が低い単語(知らない単語)の発話を比較することで、日本語でもブローカ野が後者の発話のための「間接経路」を担っていることを確認しました。一方、偽単語(無意味単語)の発話によって運動前野が賦活したことから、単語発話に「第3経路」が存在すると結論しました。

本年度は、発達性吃音者におけるブローカ野の機能異常を確認した上で、発話に関わる神経経路を検討しました。非吃音者群と比較して、吃音者群においては単語の親密度や無意味単語の別によらずブローカ野の賦活が弱く、逆に左の運動野・運動前野には単語種類によらず、非吃音者群より強い賦活がありました。

これらの結果は、吃音者ではブローカ野を経由する間接経路に機能障害があり、さらに弓状束を経由すると考えられる直接経路にも機能不全があるため、本来は偽単語でのみ強く賦活するはずの左運動野・運動前野の第3経路を経由して、あらゆる単語を発話している可能性を示唆しています。すなわち、吃音者はすべての単語の発話に、母語の単語発話には比較的非効率的と思われる第3経路を使わざるを得ないために、流暢な発話が困難であると解釈できます。

しかしながら、今回の結果は統計的な結果であり、個人差が認められました。今後は、詳細に臨床所見と突き合せてより細かい解析を行い、個人毎の吃音評価や治療予後の予測に活用できるように努力して行きたいと思います。



研究所福祉機器開発部 山中 康弘
演題:「トレーニング用バーチャルオフィスのコンセプト提案」


この度は、発表しました「トレーニング用バーチャルオフィスのコンセプト提案」に過分な評価をいただきまして、ありがとうございます。

このシステムは、一人では外出しにくい障害者のために在宅でも仕事するためのトレーニングを行うことができるシステムが必要となっています。そこで、本研究では、在宅でトレーニングをするためのシステム、「トレーニング用バーチャルオフィス」のコンセプトを提案させていただきました。

トレーニング用バーチャルオフィスは、遠隔通信技術を用いた遠隔支援システムとトレーニングプログラムを組み合わせたものです。トレーニングプログラムには、初心者向けプログラム,講習会型,在宅就業用OJTプログラムの3つがあり、初心者から就業中の人まで対応できるものになっています。

初心者向けプログラムは、スカイプ等を使いつつ、トレーナーと個別指導でパソコンの画面操作等を見ながらトレーニングができるものになっています。

講習会型のプログラムは、福祉施設等で行われている講習会型の遠隔支援システムを使って、ワードやエクセル、ビジネスマナー等のトレーニングができるものになっています。講習会型の遠隔支援システムでは、該当するシステムがなく、リアルタイムでトレーナー、トレーニング生,双方の動画配信できる動画配信機能とスケジュール管理、掲示板、eラーニングコンテンツ等の情報共有機能を兼ね備えたシステムを開発しました。

在宅就業用OJTプログラムは,講習会型の遠隔支援システムをグループ用のシステムに改良し,仕事体験型等のプログラムをグループで行うものになっています。

今回、初心者向け、講習会型、在宅就業用OJTプログラムの3つのトレーニングを行うシステムのコンセプトを提案させていただきました。

今後、3つの場合で、トレーニングの実証実験を行い、実際に福祉施設の現場で導入できるように、トレーニング用バーチャルオフィスを開発していきたいと考えております。