〔巻頭言〕

ランニング ライフ

理療教育・就労支援部長 飯塚 敏幸



 以前、エイジレス・ライフ(年齢にとらわれず自らの責任と能力において自由で生き生きとした生活を送る)を実践している高齢者や、地域で社会参加活動を積極的に行っている高齢者のグループを紹介する仕事に携わったことがあります。若い頃から培った知識や経験を高齢期の生活で社会に還元して活躍されている方、中高年から一念発起して物事を成し遂げた方、グループ活動を通して社会とのかかわりを持ち、生き生きと充実した生活を送っている高齢者中心のグループなどを目の当たりにして、現役のうちに老後の過ごし方を考えておく必要性を痛感しました。
 その後、仕事に追われる日々が続きましたが、時間を見つけては、体力づくりとして気功やテニス、潤いのある生活づくりにとピアノや尺八の演奏、趣味と実益を兼ねてそば打ちや野菜作りなど、いろいろなことを試みてきました。どれも中途半端で今は一時停止状態ですが、エイジレス・ライフの下準備として、将来に生かして行きたいと思っています。
 そんな私ですが、今から3年半ほど前、塩原視力障害センターへ単身赴任した時のことです。赴任早々の4月、昭和の日に、地元塩原温泉街で開催される「塩原温泉湯けむりマラソン全国大会」に主催者側関係者として出席する機会がありました。本マラソン大会では、塩原視力障害センターの利用者と教官が、レースを終えたランナーに対して無料でマッサージを施すことが伝統的に行われており、大会の目玉ともなっています。ランナーに喜んで頂いていることは勿論ですが、利用者にとっても多くの人にマッサージを行うことによって実技の技能向上に大いに役立つとともに、人から感謝される喜びを実感できる大変貴重な機会となっています。私自身もこのマラソン大会を通して初めて知ることも多く、マラソンに対するイメージも変わりました。この時の大会での最高齢参加者は93歳で、5キロメートルを元気に完走されました。マラソンがこんなに高齢になっても楽しめるスポーツであることを知り、また、ゴール前までは苦しそうに走っていたランナーも、ゴール後はみんな満足気で爽やかな笑顔でいることに接し、いつかは自分もランナーとして参加してみたいという衝動に駆られました。その後、健康不良もあり、塩原センター周辺を走り始め、翌年の大会にはランナーとして参加し、走ることの幸せや喜びを実感することが出来ました。
 爾来、ランニングは私の生活の一部となり、今でも休日は家の近くを走ったり、地元で開催される大会に参加しています。ランニング中は日常のストレスから開放され、走り終えた後の爽快感は何物にも代え難いものがあります。
 季節はスポーツに最適な秋に向かっています。10月の流山ロードレース、11月の四街道ガス灯ロードレース及び12月のいすみ健康マラソンは既にエントリー済みで、その後も毎月1回どこかの大会に参加する予定です。そして、来年4月には三度目の塩原温泉湯けむりマラソン全国大会に参加し、完走後にセンターの利用者からマッサージを受けることを今から楽しみにしています。
 人生80年時代、これからも爽快さを求めて走り続け、東京マラソン完走を中期目標とし、行く行くは視覚障害者の伴走者としてお役に立てるようになりたいと思っている今日この頃です。