〔魚拓シリーズ7〕
ソイ
前理療指導室長 川政 勲


 ソイはフカカサゴ科の魚で、北海道南部以南の各地、朝鮮半島南部、中国に分布する。沿岸の浅い岩礁域に生息している。
 ムラソイ(北海道ではハチガラと呼ぶ)、キツネメバル(同マゾイ)、クロソイ、ゴマソイ、シマソイ等の種類がある。カサゴやメバルもフカカサゴ科の仲間である。
 北海道から北関東では、釣りの好対象魚であり人気の高い魚で、刺身にして食べると、身がこりこりしてとても美味い魚である。
 私が初めてソイ釣りに挑戦したのは、今から約33年ほど前。職場には何人も釣り好きな先輩が、道南の釣り場でそれぞれ腕を競っていた。その中で、気楽に手ほどきを教えて下さるボイラーマンの型がおられた。
 リールだけは自分で購入し、あとの道具や仕掛けは彼にお任せ。
 ソイ釣りは夕方から夜に行う釣りで、テトラポットの上の安定した場所に釣り座を構え、暗くなるのを待つのである。
 釣り方は「ガラ引き」といって、錘に鉄の棒を使い、餌には生きたドジョウを付け、遠くへ投げて、リールを巻いて誘って喰わせるという釣り方である。
 2回ほどの釣行では1匹も釣れず、ドンコと言われる不味い魚が1匹だけ。
 3度目は「今日こそは」と張り切って臨んだ。
 ドジョウをしっかりと付け、第1投目、リールを巻いていると重くて巻けない。一生懸命に巻いているが中々手元まで引き上げられない。思わず「Aさーん、Aさーん」と大声で助けを求めた。横に来て手を貸してくれたAさんは、初心者の下手な竿捌きに、竿を折られないかとハラハラしながら魚を引き上げてくれた。
 「釣れた時大きな声を出すな。他の釣り人にポイントを知られてしまう」とたしなめられたが、何がなんだか分からないうちに、先輩釣師が釣ったことの無い、40センチ、1キロの大物のソイが釣れてしまった。
 翌日自慢げに職場に持って行き、墨で魚拓を取ったが、今は何処へ行ったか行方不明である。


    貝風鈴風の重さを鳴らしけり   いさお


 
  (写真)魚拓 ソイ