〔新規導入機器紹介〕
「理療教育学習・評価支援システム」の導入と活用
理療教育部 太田浩之


 今回は、昨年度、理療教育部において設計・構築(開発は民間業者委託)された 「理療教育学習・評価支援システム」について簡単にご紹介します。
 理療教育課程の特別学習室に導入されたこのシステムは、Webサーバとデータベースの 連携のもと、理療教育課程入所者が受験する、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師 国家試験等の問題作成とその管理、試験実施等の支援機能を有します。
 画面文字色の変更や代替キーボードアクセスによる音声化対応等、そのインターフェイスは、 視覚障害を有する入所者や教官によるアクセシビリティにも考慮して設計しました。
 主な機能として、「学習支援」機能と「評価支援」機能があります。

「学習支援」機能

 個別の学習支援機能であり、学習者(入所者)はあらかじめサーバに登録された過去の 国家試験問題(四肢一択形式、現在まで約3,700問)から、スクリーンリーダによる Webブラウジング同様の簡単な操作により、科目やその単元、問題数を指定して解答してゆくことが できます。採点結果の表示は、各問解答後、又は全問解答後のいずれかを選択できます。
 その後、以下の選択によって更に学習を深めることができます。
 (1) 同一の問題を最初から再度解答すること。
 (2) 解答した問題、解答及び正答をCSVファイル形式で出力すること。
 (3) 解答した問題、解答及び正答を拡大文字でプリントアウトすること。
 自分のペースで繰り返し学習することにより、学習者は学習成果の確認や自らの弱点の発見を することができます。

「評価支援」機能

 この「評価支援」機能は、教官による試験実施・採点・評価を支援する機能です。
 試験実施の方法は次の二つがあります。
 (1) データベースに登録された国家試験問題から、科目や単元、問題数を指定して実施。
 (2) 教官がExcel等市販のアプリケーションにより作成した各試験問題のファイルを システムに登録して試験を実施。
 これらの試験解答結果は2つの方法で直ちに集計され、教官用コンピュータ上での画面表示や ファイル出力を行うことができます。
 理療教育課程の学科試験は、墨字及び点字の問題作成に加え、カセットテープへの録音と ダビング作業を経て準備され、採点時にも視力補助を要することもあります。 このシステムにより試験実施の事務量が大幅に減り、例えば各単元ごとに入所者の理解を 確認しながら授業を進めてゆくことや採点結果の集計や詳細な分析により、 より適正な評価・指導活動に役立てることが期待できます。



1.システムによる一斉試験を実施している様子


活用のための講習会の開催

 視覚障害を有する理療教育部教官への操作法講習会は、昨年7月22日(木)、27日(金)の 二日間にわたって、開発業者により実施されました。


活用例

 写真1は、私の担当する関係法規の時間におけるシステム活用風景のひとコマです。 まず、過去の国家試験問題から用意した15問を授業の前半で解答してもらいます。 その集計結果、各入所者の解答状況やそれぞれの理解の程度を確認しながら授業の後半で解説を行います。
 コンピュータ操作に慣れない入所者でも、左手を方向キーに、右手をテンキーのエンターキー に置き、これらのキー操作のみで各問題を聞いて解答することができるように設計されています(写真2)。


最後に

 私の高校時代に、英語のリーダーの先生が毎時間のように書き取りの小テスト20問を 行っていました。当時は大変な思いでしたが、今はその労力を理解し、感謝する気持ちも生まれ、 それがこのシステムを作るきっかけとなりました。
 教育・訓練におけるコンピュータの役割の一つは、単に授業の効率化の次元にとどまらず、 コンピュータやネットワークの利活用によって、教官一人ひとりの授業力を補完、 あるいは増幅させ、より個に応じた効果的な一斉授業の実現を援助するためのツールで あろうと考えます。



2.ある全盲入所者の試験の解答の様子