〔新規導入機器紹介〕
理療教育課程授業支援ソフトを導入
理療教育部 太田浩之



 去る1月、理療教育部において導入された校内ネットワーク 対応の授業支援ソフトについてご紹介します。

導入の背景と目的

 現在、政府が進めているミレニアム・プロジェクト(新しい 千年紀プロジェクト)のひとつに「教育の情報化」があり、この プロジェクトを推進するための様々な施策がハード、ソフトの 両面から公立小・中学校、高等学校において進められています。 また、高等教育各機関においてもそれぞれに教育の情報化、IT化 が推進されています。
 更に視野を広げれば、この教育の情報化とは、教育改革として 各国ともに重要な政策課題と位置づけているものです。
 わが国において、平成13年度までにすべての公立学校をインタ ーネットに接続するという計画が実現された今、平成17年度を 目標とした、すべての学級のあらゆる授業において教員及び児童 生徒のコンピュータ、インターネットを活用できる環境の整備が 各公立学校の目標とされます。そのために、インターネットに 高速接続可能なコンピュータの整備は、コンピュータ教室以外の 普通教室にもそれぞれ2台を設置、教職員のIT活用指導力の育成等 を具体的目標として掲げています。
 しかし、実際の教育現場には、多くの課題も発生します。 ワープロで文書を作り、メールの送受信やインターネット検索は できるものの、授業でIT機器をどう活用するのか、サーバーや ネットワークの管理・運用の問題等々。こうした事情を背景に、 各教育現場教職員のIT器機利用の負担の軽減を図りつつ、それ ぞれの授業をサポートし、また校内ネットワーク管理を支援する 授業支援ソフトは、数年前から登場し始めています。
 全国の盲学校同様、あん摩マッサージ指圧師、はり師及び きゅう師の学校養成施設として、私たち理療教育部においても 理療教育の情報化の検討に今年度から取り組んでいます。
 この取組みは、平成12年度の視覚障害を有する職員をも積極的 に参加させた当センターLAN整備事業1)、平成13年度の理療 教育課程における情報基礎教育を担う「情報概論」の導入2)に 続く、理療教育部の業務革新、授業改革への第三段階の事業で あり、その目的は情報通信機器の利活用による、より魅力ある 授業、より効果的なサービスの提供にあります。

 1) http://www.rehab.go.jp/Achievements/17th/Paper29.html
 2) http://www.rehab.go.jp/Achievements/19th/Paper21.html

製品の選定方針

 理療教育課程のコンピュータ室である特別学習室の性質から、 当センターが授業支援システムに要求する性能・機能を次の項目 について比較・検討して購入製品の選定を行いました。
 1. 授業での多様な活用性と利便性(教官用コンピュータからの 画面転送・ビデオ配信機能やインタラクティブ性)
 2. コンピュータ及びネットワークの管理・制御・運用機能 (今後予定される特別学習室と普通教室とのネットワーク内クラ イアント機の保守、設定や電源の管理等)の充実度
 3. 容易な操作性(サーバー、ネットワークに関する専門的な 知識をもたない職員の活用期待性や視覚障害を有する職員のアク セシビリティ)

今後の活用方法

 この授業支援ソフトを活用した「先生機」から「生徒機」への 画面転送機能は、黒板代わりになります。ワープロやプレゼン ソフト、あるいはデジタルカメラを組み合わせれば、資料の提示 だけでなく、思考の過程をディスプレイ上で提示することも可能 といえるでしょう。各教官が日常的に使用するアプリケーション により、音声教材を含めた思い通りのデジタル教材を作成、提供 し、授業に役立てることもできます。
 これまでのビデオテープ等の映像による視聴覚教材は、ビデオ 同時配信機能によりデジタルコンテンツとしての更なる利用が 実現します。
 また、各種管理・運用機能は、サーバーやネットワーク、各端末 の管理・運用等の労力を軽減させ、専門的な知識のない教官でも 容易にそれぞれの授業に活用することを可能にします。各教官は、 授業そのものの質的向上を図ることに力を入れることができます。
 理療教育課程において、コンピュータやネットワーク、インタ ーネットを活用したより魅力ある授業を多くの教官が提供する ことにより、入所者の学力の向上を図り、あん摩マッサージ 指圧師、はり師及びきゅう師国家試験の合格率の向上に寄与する 基幹システムとしての活用が見込まれています。
 当面は、この学習支援システムを活用するための教官への研修 の機会も必要になります。教育用コンテンツの充実とともに、 次年度に向けた課題といえるでしょう。

最後に

 ITは、すでに社会に不可欠なインフラであり、教育現場に おいては極めて有効なツールとなっています。
 こうした社会背景のもと、教育の情報化とは、ITリテラシー の向上や授業の効率化の次元にとどまるものではなく、従来とは 異なる新しい授業スタイルを構築すること、つまり、授業のイノ ベーションにこそ本来の価値が見出されるものであり、多くの 研究事例も報告されるようになりました。
 主に中途失明者の在籍する理療教育課程が他の教育機関と異なる 要素を基盤として、現在及び将来の情報通信技術とともに、理療 教育分野にいかなる変革の道筋をつけてゆくべきか、これは困難 であると同時に、楽しみでもあります。

特別学習室イメージ図 「生徒機」と呼ばれる各端末のスクリーンを「先生機」からモニターしている様子