【ページ】4 【タイトル】理療教育について、理療教育は心に寄り添う支援   我が国において、あん摩、はり施術は、視覚障害者の特性に合致していたことから、数百年に渡り、民衆に深く受け入れられてきた史実があり、これは世界的にみても大きなレガシーであるといえます。 しかし、その魅力によって、健常者の参入が相次ぎ、時代の大きなうねりとなって、昨今では視覚障害者がシュとなって営む職業ではなくなってきたことも事実です。 様々な境遇を経て、また、大変な葛藤を乗り越えながらも理療の道を選んだ方の中には、「見えなくなって仕方ないから」、「他に仕事がないから」といった、積極的とはいえない動機の方が少なくありませんでした。 それでも、ある程度頑張れば資格を取得できましたが、昨今の国家試験や就労継続の困難さ等から、より一層の苦難に対する覚悟が必要になってきているといえます。 重度視覚障害者の就労は、理療に従事する専門職が今なお全体の半数以上を占めていますが、他者の体に触れ施術する限りは、安全且つ効果的に実践できる良識と技量が必要となり、ときには他職種との連携が求められるため、資格を有した職業人としての責任感を備えたうえで、誠実に前向きな思考力のある人材を育成しなければなりません。 更にいえば、どんな試練にも負けず、心の痛みに耐えながらも全てを学びに変えられる、そんなポジティブな考え方ができる心を持った人を育てることが望まれます。 あはき師の育成において理療教育は、専門知識や技術を身に付け、臨床技能を伸ばしていくもので、これは樹木でいえば根幹を成す不可欠なものに当たりますが、それらを支える根底となるのは人格であり、志やリタの精神であると思います。 そのためには、人として大切な考え方を支える、基本的な理念の存在が大切であるといえます。 例えば、人を思いやること、利欲にとらわれず正しい行いをすること、敬意を持って人と接すること、道理を踏まえた知恵をつけること、誠実であること。 これらを育てる側や育つ側の両方が、行動規範として掲げて徹底を図り、習慣化することで、視覚障害の理療施術者に対する他者からの信頼が得られ、社会評価のアップとなれば、今後の就労移行支援の促進にもつながるものと考えます。 そのような人づくりにおいては、調和のとれた健全なる支援環境のもと、単なる知識や技術の教示だけではない、利用者が越えねばならない多くの関門や困難に対して、夢半ばで挫折し、後悔することのなきよう、これまで以上の手厚い、「心に寄り添う支援」が必要になってきているといえます。