障害者の自立移動支援における情報技術利用方法に関する調査研究

主任研究者 中山 剛

研究の目的

 これまで支援対象者にはあまり含まれていなかった高次脳機能障害者等を対象とした調査を行い、情報技術や社会情報インフラの有効な利用方法について明らかにする。歩行訓練の専門家の観点からの検討も併せて行う。

研究でわかったこと

 高次脳機能障害者や知的障害者や発達障害者には移動時に様々な困難を抱えている方も多い。
 約7割の高次脳機能障害者が携帯電話を利用している。
 6割弱くらいの高次脳機能障害者が道に迷いやすい。
 多くの高次脳機能障害者にとって現状の携帯電話は多機能すぎて操作が難しい。機器の操作を簡単にし、情報の提示方法を工夫すれば、重度の高次脳機能障害者でも独力での移動が可能な方がいる。
 歩行訓練の際にはあまり情報機器が利用されていない。情報技術を活用した歩行訓練を肯定的に捉えている歩行訓練の専門家も多い。
 各機関で実施されている各プロジェクトの認知度は低い。
 歩行訓練の専門家によるプロジェクトの実態調査の結果「誘導音による誘導法に安心感が得られた」など肯定的な意見が得られた。
 一方、コミュニケータが提供する以外の情報に意識が行かなくなるなど、幾つか危険性の指摘もあった。
 白色背景の壁には黄色のタグより青色や赤色の方が見やすい。
 階段のタグは照度が高いところに床面から120cmくらいの高さに貼るのが良い。
 幅2mの廊下を直進する場合、タグを4m間隔で左右交互に配置するのが良い。

結論とこれからの課題

 高次脳機能障害などの認知障害のある障害者も外出や移動に困難を抱える方が多いことが明らかとなった。
 障害者の移動を支援するプロジェクトを計画実施する際には、認知障害、知的障害、発達障害などに起因して移動や外出に困難を抱える方にも考慮して実施することが望まれる。