高次脳機能障害者の社会参加支援の推進に関する研究

主任研究者 中島八十一

研究の目的

 高次脳機能障害者が、ライフステージに応じて社会参加の目標をもち、医療・福祉サービスの利用により社会参加できる社会の仕組みを作ることを目的とする。 高次脳機能障害者の就労についてこれまでの支援事業では一般就労に重点を置いてきたので、本研究では支援拠点機関の相談者の半数以上を占める福祉就労レベルの当該障害者の福祉サービス利用を促進することにより、サービス利用層の一層の拡充を図る。中でも就労継続支援施設等での受け入れに必要な緒条件を明らかにし、家庭以外での居場所の充実を図る。 一方、学童期から大学生までの就学については、支援対象者が全国で約7,000名程度いると推計され、保護者からの施策に対する要望は強く、小・中学生まで含めた就学体制の構築の基礎研究を実施する。特に学童期の障害児まで視野に入れ、支援拠点機関窓口での相談から特別支援学級・学校の受け入れまでの道筋を地域ごとに明確にし、教育関係者への当該障害者(児)への教育面での配慮を促進する。 加えて、失語症者と高次脳機能障害者の施設共同利用、介護保険関連施設での老齢高次脳機能障害への理解の促進を並行して実施することにより、高次脳機能障害者と失語症者について年齢を問わない支援サービス提供・利用を容易かつ有意義なものにする。 以上に加えて、これまでの高次脳機能障害支援普及事業の運用を研究分担者の活動により継続する。

研究でわかったこと

 全国100か所の高次脳機能障害支援拠点機関において、375名の支援コーディネーターが年間95,510件の相談に対応した(前年比18,733件増)。同拠点機関が主催または協力した会合の実施回数も前年より増加していた。特にケース会議の実施回数が増えていることから、研修会・講習会による高次脳機能障害に関する一般的な普及啓発だけでなく、個別事例の支援についても活発に検討していることが示唆された。障害者支援施設における受け入れ状況は、3年間で26%から36%となり、劇的ではないにせよ確実に増えていることがうかがわれた。

結論

 全国の支援拠点機関の活動はこれまでの中で最も活発であり、高次脳機能障害支援普及事業は当該年度の目標を達成したと言い得る。