高次脳機能障害者の障害状況と支援方法についての長期的追跡調査に関する研究

主任研究者 中島八十一

研究の目的

 モデル事業の成果を高次脳機能障害者支援の現場で有効に活用するため、長期的支援の経過の中で、当該障害者の個人特性や環境要因の相違により、選択すべき施設や支援サービスがどのように異なるかを検討し、当該障害者の長期的支援方法を確立する。
 簡易神経心理学的検査法とfMRIとPETによる脳機能診断法を開発する。

研究でわかったこと

 高次脳機能障害者を介護保険の対象とした場合における介護ニーズと要介護認定の判定結果によれば、高次脳機能障害者ではADLに含まれる事項ではほぼ自立しているにもかかわらず、IADLに含まれる事項では困難を来たすことが多いことが明らかにされた。
 就労状況について、長期的な追跡調査を実施した。
 fMRIを用いた遂行機能障害の診断法については、健常者と障害者の比較を行い、さらに課題の成績と脳活動の関係を検討することにより、遂行機能に関与すると考えられる脳部位を大脳皮質の左中前頭回(BA9)と左右上前頭回(BA10)と特定した。
 専門職が支援を計画する際の資料となる高次脳機能障害支援ニーズ判定票を改訂した。支援類型ごとの対象者の特徴、障害者自立支援法への検討により、高次脳機能障害者への支援には何かあった時に支援するための体制等が必要である事が示唆された。
 高次脳機能障害を評価する、福祉施設でも実施できるような簡易神経心理学的検査法を開発した。この検査法は短時間(20分程度)で施行可能である。
 機能的MRIと PETを用いて遂行機能障害診断課題を施行した。個人ベースの解析において、負荷課題・統制課題とも基本課題との比較において前頭葉の活動が同定された。適切な課題設定をすれば機能的MRIと PETを用いて高次脳機能障害を有する患者に正しく器質的脳損傷があったと診断できる。

結論とこれからの課題

 高次脳機能障害者について、長期的支援方法の確立のための調査結果が得られた。
 高次脳機能障害支援ニーズ判定票が改定され簡易神経心理学的検査法が開発された。
 機能的MRIと PETを用いた遂行機能障害診断法が開発された。