生体工学研究室では、障害者の身体表面に設置して計測するためのシート型センサを開発しています。ここで紹介するシート型せん断りょくセンサは表面に水平な方向に働く力を測ります。センサの直径は10ミリメートルで、厚みは実測でおよそ0.7ミリメートルです。測定回路はモバイルバッテリーを電源とし、パソコンに測定データをリアルタイムで無線送信します。 身体の表面形状に対応してセンサ自体が変形できるようにするため、センサは柔らかい材料のみからできています。センサの内部には電解液をはさんで上下に電極が配置されており、せん断りょくが働くと上下の電極の間の距離が変わるので電流が変化します。この電流変化を測定し、せん断りょくを推定します。せん断りょくは2次元の力なので、上側に1個の電極、下側に4個の電極があり、力と方向が同時にわかります。 今後の多様な応用研究に対応するために、センサデバイスや測定システムの改良を行なっています。例えば、既存のシート型圧力センサと重ね合わせることで、せん断りょくに圧力を加えた3次元の力を測定するセンサを作製しました。 センサの使用例をご紹介します。応用測定は研究所内の他の部との共同で行なっています。この図は義足ライナーと足との間にセンサを設置し、膝を屈伸したときのセンサ出力です。右側のグラフからは屈伸と平行する方向にのみ力が加わっていることがわかります。 また、衣服の上から臀部にセンサを貼り付けたのちに車椅子にちゃく座し、様々な姿勢を取ったときのセンサ応答を調べました。身体の姿勢によってせん断りょくが変化しています。 せん断りょくセンサは研究所内外の研究グループに提供され、障害に関わる様々な研究に応用されています。ご清聴有り難うございました。