「自分で歩く」を支援する:無動力×装着型歩行支援機構の提案 について,障害工学研究部 眞野から紹介します. 本研究では,脳血管障害に起因する左右非対称歩行を対象とし,装着者の身体機能を活用 する無動力の装着型歩行支援機構を提案しています. 従来の外骨格型歩行支援機器の多くは高いアシスト力を有しており,高いリハビリ効果が 示されています.一方,センサ貼付,充電,装着位置の調整など,手軽な利用普及への課 題がありました. 本研究では,これらの課題に対し,麻痺症状のない健側股関節の屈曲・伸展動作からエネ ルギーを取得し,巻バネへのエネルギー蓄積を経て,患側支援に応用する歩行支援機構を 開発しています. 本提案機構は,エネルギー蓄積部と大腿側面の間に回転自由度と直動自由度を含み,大腿 への装着位置を遠位から近位へと調整が可能となっています.この位置調整に伴い,蓄積 されるエネルギー量が変動します.産業技術総合研究所の歩行データベースを用いたシミ ュレーションでは,膝上付近への装着条件と,股下付近への装着条件の間に,最大1.5Nm 程度の蓄積エネルギーの差が生じることが確認されています. 引き続き,支援機構の実現に向け,動力源となる健側股関節の負荷評価や,体幹に対する 機構装着が歩行中の姿勢に及ぼすリスクの評価を進め,使用目的や身体機能に応じたアシ ストの供給が可能な歩行支援技術の開発を進めていきます. (582字)