外側楔状足底板を用いた歩行の動作分析
〜変形性膝関節症に対する装具治療の裏付け〜

研究所 運動機能系障害研究部 垣花渉・谷崎雅志・山崎伸也・赤居正美

【背景】

 外側楔状足底板(Lateral wedged insole、以下LW)を用いた装具療法は、内側型変形性膝関節症に対する保存療法の一つである。LWの効果は、内側型変形性膝関節症患者の脛骨を直立化させて膝の内側に集中する荷重応力を外側へ移動させることにあると考えられている。しかしながら、それについては静的状態での力学的観点からの検討にとどまっている。

【目的と方法】

 本研究は、LWが下肢へ及ぼす力学的影響を明確にするため、足底部にLWを用いて足底部の傾斜を変えたときに歩行の立脚期において膝関節と足関節の前額面内での関節モーメントがどのように変化するかを調べた。そのため、健常者10名(男性5名、女性5名)を被験者に用いて、各自の最も歩きやすい速度でフォースプラットフォーム上を歩いたときの力を測定した。同時にその動作をVICON370を使って撮影・解析した。データ処理は、各人の5試行における定常歩行の2周期(立脚期)を対象に、膝関節や足関節の位置、床反力や床反力作用点、および膝関節や足関節の関節モーメントについて行った。

【結果】

 足底部の傾斜が大きくなると、足関節での内反モーメントは大きくなり、膝関節での外反モーメントは小さくなった。膝関節中心点と足関節中心点との水平距離は、足底部の傾斜が大きくなっても一定の傾向がみられなかったが、足関節中心点と床反力作用点との水平距離は明らかに長くなった。それに対して、床反力の鉛直成分と左右成分の大きさは、足底部の傾斜の違いによる差が認められなかった。

【考察】

 これらの結果より、LWの傾斜が大きくなることで膝関節での外反モーメントが小さくなったのは、床反力作用点がより外側へ移動したことで足関節での内反モーメントが大きくなったためであると推定される。以上より、LWは動的状態においても膝の内側に集中する荷重応力を外側へ移動させるが、それは膝関節や足関節の前額面内でかかる力に影響を及ぼす可能性が高いことが示唆された。




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