電動義手の適応評価と公的給付制度の現状

研究所 補装具製作部 高橋功次・松原裕幸
病院 診療部 赤居正美
病院 第一機能回復訓練部 森田稲子・井上美紀・野月由香理

 上肢切断者が使用する義手の種類には、@装飾用義手(外観を整えるもの)、A作業用義手(農耕作業などに用いるもの)、B能動義手(自分の意志で物を持つことができるもの)の3つに大別できる。このうち能動義手には、義手の手先具を開閉させる方法に従来からのケーブルを用いる方法と、電動で動かすものがある。
 これらの義手は、身体障害者福祉法や労災補償法などの公的給付制度によって支給を受けることができるが、電動義手については通常の支給ではなく「基準外交付」の扱いとされ、障害者にとって真に必要と判定されなければ公的給付を受けることができない。
 現在、国内における電動義手の普及状況は極めて低く、その原因には、@障害者と医療関係者に正確な情報が行き届いていないこと、A給付制度の扱いが基準外であること、B装着・体験できる機会が少ないこと、などがあげられている。
 そこで我々は、電動義手の装着を希望する切断者に対して、仮電動義手を装着させて日常生活において試用してもらい、最終的な支給に至るまでにかかるリスクについて検討することを目的とした試用評価を行った。
 平成13年3月から、3症例の片側前腕切断者に対して試用評価を実施した結果、1症例は評価開始後1ヶ月で使用を断念したが、2症例では試用評価を通じて義手の操作性と受け入れ意識の向上が確認できた。使用を断念した症例は、これまで5年間、ケーブル操作による能動義手を使用しており、それと比較した結果、操作性の難易度と重さによる断端への負担を理由に継続使用する意志が得られなかった。
 受け入れが確認できた2症例のうちの1症例は、評価開始当初「自費でも購入するか?」の問に対して「NO」であったが、試用評価を続けるうちに義手使用による両手協調動作の改善が実感できたため、2ヶ月後には「自費でも購入したい」という意識に変化した。この2症例について、基準外交付申請を行った結果、1症例は身障法による交付が決定されたが、もう1例では労災による支給が認められず、身障法においても他法優先を理由に保留中となっている。
 電動義手は部品単価が高額なため、最終的な支払い元の確認ができなければ民間では取扱えない。公的機関における試用評価の実施は、民間にとってリスクの高い部分を請け負うことで、補装具の判定や障害者への支援に大きな効果があると考えている。




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