聴覚障害者の「自己発生音」に対する意識調査

更生訓練所 森本行雄・菅原美杉・会田孝行・佐藤徳太郎
病院 第二機能回復訓練部 田内光
研究所 林良子
東北大学 佐藤洋

1.はじめに

 聴覚障害者は音の大きさの判断が難しいために、自らの日常生活活動に伴って発生する音(自己発生音)に対し、不安に感じながら生活している場合がある。そこで自己発生音の大きさをどのように認識しているか、どのような場面における自己発生音に対して不安を感じ、その大きさの程度を知りたいと思っているのかなど、自己発生音に対する意識調査を実施した。なお、昨年度の業績発表会において、聴覚障害入所者に対する意識調査の結果を報告したが、今回は追加した入所者を含めて、聴覚障害者団体会員、高齢者など対象を広げて調査し、比較した結果を報告する。

2.対象者と方法

@聴覚障害入所者      48名(平均年齢22.8才)

A聴覚障害者団体会員   35名(平均年齢40.2才)

B高齢者           144名(平均年齢66.2才)

C健聴者            49名(平均年齢42.1才)

 質問用紙を配布し、計58の調査項目について個別に記入することを依頼した。

3.調査結果

・ 大きい音と認識していると回答したものは、@〜Cともに、車、バイクのエンジン音・クラクション音、掃除機の音などが高い割合を示した。音の大きさに対する認識に各対象者間で大きな相違はなかった。

・ 全58項目のうち、自己発生音に対し少しでも不安に感じていると20%以上が回答したのが、@は27項目であるが、Aは51項目であった。@は若年層であるが、Aは社会経験がある方が多い。このことから社会生活を送る上で、不安を感じる何らかの体験が多いのではないかと思われる。なお、Bでは17項目、Cでは32項目であった。

・ 音の大きさの程度を知りたいかについては、BCは全項目とも8%以下であったにもかかわらず、聴覚障害をもつ@Aはほぼ全項目とも20%以上が知りたいと回答した。

4.まとめ

 58調査項目以外にも、自由記入欄に様々な音が記入してあった。このことや上記の調査結果からわかるとおり、社会生活を経験していく中で様々な音に対して、不安に感じていることがわかる。聴覚障害入所者が、修了後に社会生活を送る上で、その不安が少しでも軽減し、円満な社会生活を送ることができるよう騒音測定器等を利用した指導・訓練内容を検討していきたい。




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