医療相談室における高次脳機能障害者の相談の概況

病院 医療相談開発部 医療相談開発室 久保明夫・上野久美子・母袋道子・小山聡子・大津あかね・佐久間肇

1.はじめに

 医療相談開発室では平成13年4月の高次脳機能障害支援モデル事業の発足と同時に、相談室における相談概況の簡易統計を取り始めた。本稿では平成13年4月から10月までの相談のうち、特に高次脳機能障害者の相談の概況について考察する。

2.相談件数(平成13年4月〜9月)

 高次脳機能障害者の相談件数377件は、およそ20%にあたる(肢体が73%、視覚が4.3%、その他2.5%)。入通院別にみると、入院が40%(全体は56%)、外来が43%(全体は14%)、その他が17%(全体は30%)で外来の相談件数が全体に比べ多かった。

3.高次脳機能障害者の相談(平成13年4月〜10月)

@相談回数:医療相談を2回以上(2〜6回)行った高次脳機能患者について述べる。2回以上相談を行った患者は、28名であった。相談回数は2〜5回が11名、6〜10回が5名、11〜15回が5名、16〜20回が2名、21回以上が5名であった。
A支援の形態:本人との面接119件、家族との面接が84件、本人と家族と同席の面接が35件で、第三者(市役所ケースワーカー等)との面接が57件、本人・家族・第三者等の同席が12件であった。なお、このうち職場等訪問5件、学校訪問2件が含まれた。
B帰結等:訓練が終了した人の帰結および訓練中の場合は予定(希望も含む)を進路によりまとめると、次のとおりであった。

a 訓練修了者(21名):在宅8名(地域活動希望2名、施設希望2名、求職1名、休職中1名、入院希望1名)、復職5名、復学3名、試験出社2名、施設2名、転院1名であった。
b 訓練中の者(7名):復職4名(2名は職業センター希望)、施設1名(更生訓練)、主婦1名、地域活動1名)。

4.おわりに

 相談室は訓練終了(退院)に向けて、および退院後の支援が主である。以下、関わったケースのうち、高次脳機能障害者の支援に於いて明らかになった主な課題等を記す。

*在宅ケース:

@地域内での活動の場(利用施設等)がないのでやむなく在宅である。
A施設利用が不適応のため在宅である。
B徘徊傾向があり在宅が難しい。

*復職ケース:

@本人の作業能率は50%でも会社の受入れが良いので、良好である。
A作業の不適応はあるが、親類の会社であるため継続就労している。
B内勤の仕事に切り替えて対応しているので良好である。
C会議の内容についていけない、顧客との話がうまくできないなど、受障前に比べ仕事の能率は1/4ほどである。

*試験出社ケース:

@受障前は管理職であったが、金銭管理や人事管理が出来ないため一般社員として働いている。また、不況で会社の経営が厳しい、障害についての理解対応に欠けるなど将来の雇用継続には不安が残る。
A高次脳機能障害に対する理解と対応に欠ける。将来は嘱託の可能性が大。

*復学ケース:

大学側は障害者としての受け入れようという意向はあるが、高次脳機能障害の理解不足、および具体的な対応に欠けている。




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