国リハ式<S−S法>による言語発達遅滞の検査・訓練

第ニ機能回復訓練部 小寺富子 ・倉井成子

 病院第二機能回復訓練部を受診する言語障害児・者の内、言語発達遅滞は約2割を占めるが(平成10年度)、従来から、問題の性質上、その殆どが長期にわたる継続指導となっている。言語発達遅滞の主たる要因は、知的障害、自閉性障害を主とする広汎性発達障害などであるが、言葉の遅れへの言語聴覚士の援助に対して、関係者からのニーズは高まる一方である。
 今回は、第二機能回復訓練部における言語発達遅滞への、<S−S法>によるアプローチの概略と症例の紹介及び臨床で得られた若干の知見を紹介した。

【<S−S法>によるアプローチ】
 <S−S法>は意味するものと意味されるものとの関係、即ち記号形式−指示内容関係(Sign-Significate Relations)を発達的に段階づけをしたもの、基礎的プロセス、コミュニケーション態度の3領域を検査・訓練の中核として考える。また、多様な言語症状を持つ子供への働きかけの重点を知るため、コミュニケーション態度の良否、音声言語の受信・発信(理解・表現)の可否などにより、言語発達遅滞の下位分類を行う症状分類モデルを設定している。そして、3領域の検査結果、症状分類、その他の情報(生育歴、発達・知能検査、他職種の専門的情報)から子供の全体像を明確にし、予後の推測を行い、今後の働きかけの方針を設定する。<S−S法>の特色は、1)検査と働きかけが有機的に結びついている、2)言語未習得を対象に含めている、という点にある。個々の子供の発達の段階や特徴にあった個別的な言語訓練プログラムを立案・実施する一方、家庭や集団生活での働きかけについても具体的に提案している。

【具体例の紹介】
 言語未習得の、5才のダウン症児と3才の広汎性発達障害、特異的に音声表現の困難な8才児の3例に、<S−S法>を適用した言語評価と言語訓練経過が紹介された。

【言語発達遅滞児の一般的傾向】
 言語理解の発達曲線が得られ、理解が進むに従って発語が改善する傾向が見られた。
 今後、更に臨床サービスが拡充されるよう、種々な努力が必要である。




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